2018年01月03日

本「ランニングする前に読む本」田中宏暁




 事の起こりは去年の春先、なんだか身体の調子が悪い。本人的には十分寝たと思って朝起きても、
「はぁ……」
とため息をついて椅子の上でぐったりするばかり。奥さんがよく見れば目の下には深いクマ、そんな時には何を語りかけても「……あぁ……ふん……」と生返事。冗談抜きで、
「……この人もう死ぬんじゃないか」
と思ったそうです。
 これが噂の男性更年期か、まさか慢性疲労症候群、はたまた鬱か。
 とにかくマズイと思い、やれることはやってみました。
 奥さんの通う鍼灸院にお邪魔して元気の出るメジャーツボを刺してもらう。家でもお灸を据えてみる。腰を温める、肩をほぐす、揉んでもらう、風呂に長く入る、タンパク質を取ろうと牛乳をガブ飲みする。サプリも飲む、健康酒も飲む。

 さして効果なし。

 そんな折ですフォーク・デュオ「カズス」の相棒、テルがカー・イベントに誘ってくれたのは。(詳細↓)
http://rakken.sblo.jp/article/180853050.html
 車中、テルが言うのです、
「走り始めた」
と。なんでも奥方が行きがかり上市民マラソン大会に出る羽目になり、それなら、と愛情を発揮して練習に付き合ってるうちにおもしろくなってきたとか。そして何より僕の心を引いた一言は、彼はそれ以前、整体の先生に掛かっていたそうですが、「走ってるおかげで整体いらず」だと。

 走るのか。

 40の声を聞いたあたりから同窓生達がレミングスのように走り始め、あたりまえのようにフルマラソンを完走したりしています。しかしメンツをよく見れば銀行員、公務員、医者、教師、そして経営者。
 つまり走りでもしないとその強いストレスから逃げられないんだ彼らは、と回し車を回っているハムスターを見るように見ていました。

 しかしあれは、回させられているのではなく回っているのであった。

 そんな会話のあと、書店へ行きますとこの本が目に飛び込んでくるのです。中を見ると、ああこの2009年の「ガッテン」の回観た観た。
「スローでいい」
というのが印象的な回でした。しかしそこでフィーチャーされていたのはお年寄りや生活習慣病の方々……ええい。
 買った・読んだ・そして・走り始めた。

 最初は近所のローソンまで数百メートルです。
 行って帰ってゼイゼイ言ってる僕を見て奥さんが大笑いしました。
 しかしやればやれるもので、毎日ちょっとずつ距離を伸ばしていきますと、駅前まで1.2キロぐらいはなんでもなく走れます。スローですしね。
 時はあたかも夏に向かうさながら、朝(といっても7時8時ですが)走って駅前マクドでアイスコーヒーなどヂューッと啜ってまた走って帰る。汗ダクダクで、ほどよく冷めた昨日の風呂に飛び込む。
 これがきもちいい。
 そんな毎日を繰り返していますと、まあテキメンです。
 元気、帰ってきました。
 ほんとすぐ。
 1週間とか10日。
 あの目のクマはどこかへ去り、食欲も湧き活発になる。
 メカニズムとしては、ほどよく疲れるのでよく寝れるんです。で、そういういい睡眠をしたあと気づくんです、ああ僕睡眠不足だった、と。
 もちろん、深い呼吸をすることによって・汗を掻くことによって・身体のいろんな筋肉を動かしたり動かされたりすることによって・血行がよくなり新陳代謝が活発になり、積極性が戻ってきます。
 すっかりマイ・ブームになって、夏のコミケの時など旅先にちゃんとトレパンと帽子を持って行き、前日旧友と呑んだくれたにも関わらず5時半に起きてスーパーホテル品川新馬場を飛び出して2キロぐらい商店街を駆け抜けました。
 あそこ朝も大風呂やってるのでもちろん飛び込む。
 最高。
 このままビール飲んで大阪帰ろかと思うぐらい。
 もちろん腹いっぱい朝食取って元気満タンでいままでにないぐらい快調なコミケでした。体調はね。

 以降、秋口に長雨があってちょっとサボったりもしましたが、チンタラ走り続けています。僕の劇的な効果を見て奥さんも走りはじめて、一緒に公園一周3キロを走ったりもします。

 この本の良さは一言で言えば、
「スロー『が』いい」
と理屈建てて説得してくれるところ。
 有酸素運動を司る回路が回るぐらいのスピードで走らないと、その能力は上がらないそうなんです。つまり速くキツく走っちゃうと、筋肉や心肺能力は上がるかもしれませんが、肝心の酸素を全身に送って活用させる能力はそれほど上がらない。
 で、スプリンターや何かのスポーツの能力を高めるために走ってる、のではない人、つまりほとんどの人にとっては、その「酸素活用能力」の方が、日常を楽にしてくれる、体力を上げてくれる、という意味で大切なのです。

 同窓会で「キロ10分」などというと本格ランナーたちに爆笑されるのですが、これからもそのぐらいで走りますよわたしゃ(笑)

 若い時、25ぐらいをピークに身体能力は落ちていくと思いますが、その頃これを知りたかった気もしますし、いやむしろ45だからたった数日でテキメンに効果が出てこうして続けられているのかもしれず、まあとにかく老いにも若きにも、もちろん男女とわず、それからインドア派の方にこそ、スロー・ジョギングをおすすめしたい。
 言うまでもありませんが、僕も奥さんも根っからの120%インドア派文化系クラブ育ち、走るなんて1mだって御免こうむる、という人間でした。それがトレーニングウェアに身を包んでこのクソ寒い中二人で飛び出していくんですからあーた。
 そのぐらい、効果があります。

 昔の人は生きていく、生活をしているだけで現代人の何倍も身体を動かしていて、それが何万年も続いてたわけですから、おそらく私たちは慢性の運動不足で、ちょっとムリクリでも身体動かさないと不調に陥るような気がします。
 ご存知かもしれませんが、クルマも完全に動かさないよりたまに乗って走り回る方がむしろ、調子を落とさず「走る」という機能を維持し続けます。クルマぐらい簡単なものでさえそうですから、人間なら、もっと。
 もちろんそれには水泳でも太極拳でもフットサルでも縄跳びでもなんでもいいと思うのですが、「走る」は靴履けばいますぐ始められるのが魅力。道具不要、相方不要、技術知識不要、時間いつでも。
 いま・ナウ・いつもの服にいつもの靴で大丈夫、財布と携帯だけポッケに突っ込んで、500mぐらい先のコンビニまで、ハーゲンダッツを買いに行ってみましょう。
 走って。
 行って帰ってゼイゼイ言って、しばらくするとでも、なんとなくちょっと元気になった気がしますよ。
 ボーン・トゥ・ラン。
posted by ながた at 22:53|