2018年05月31日

映画「犬ヶ島」 監督:ウェス・アンダーソン


http://www.foxmovies-jp.com/inugashima/

 面白かったです。
 ストップモーション・アニメ。
 犬を助けに行ったら、犬に助けられた話。

 奥が監督のファンで、引きずられるようにして前作『グランド・ブタペスト・ホテル』を観まして、なかなか良かったものですから、今作も。
 独特のテンポ、感傷的な場面でも演出過多にならずCoolなところ、個性的なキャラと脱力ギャグ、次の展開が読めないところ、そしてなにより映像の凝り方。
 ストップモーション・アニメやクレイ・アニメには、3Dアニメにはない「圧」がありますね。

 今回は舞台が「20年後の日本」ということで、我々日本人としては「おっ、受けて立ちましょう」とニヤリするものですが、見事に頷ける。違和感なし。
 絵面だけではなく、舞台の社会性やキャラクターの人間性もとても日本的。たとえば、主人公を助けるヒロインは交換留学生のアメリカ娘で、Wikipediaには「ホワイトウォッシュだ」という批判もありますが、いやいや、彼女の活躍を我々が観ると、
「いや、こういう化外の者(=立場の無い者)でないと、こういう言動・行動はできないのよ、日本では」
 むしろ監督の見識スゲー。
 脚本チームに日本人(らしき漢字のお名前)がおられるようで、その方がある程度は整えたにせよ、見事なものです。
 元々クロサワやミヤザキが大好きな御仁らしく、日本という異文化に対して雑な扱いがないのが嬉しいですが、その分、自動的に辛辣にもなります。
 犬ヶ島の打ち捨てられ方は、胸に痛い。

 リアリティ一辺倒ではなくて明らかなパロディもちょいちょい混ぜてあって、そこも楽しい。
 お寿司を調理する場面が挿入されるのですが、魚介の切り方とかめちゃくちゃで(笑)それはもちろんわざとで、そういうこと=たとえば築地のセリを、たとえば「すきやばし次郎」を、過度に神格化する欧米セレブリティを軽く揶揄しつつ、「たかだかそんなこと」に血道を上げる日本人の凄さとバカバカしさを同時にサラッと表現している。
 冒頭、少年3人が見事な和太鼓を披露するのですが、3人とも微妙に色白のぽっちゃり体型で、年嵩の日本人が特に好む「男の子」の原型──金太郎さんのような、近所の子ども相撲チャンピオン──を直撃しており、えっ監督なんでそんなことまでご存知なんですか、と。

 といって日本フィーチャーすぎず、テーマは普遍的。悪人よりも怖いのは暴走官僚機構だ、とかね。
 兄が弟に自分の役割を継がせるところなんか、泣けますね。

 脚本は非常に鉄板で、危なげがなく、言い方は悪いのですが「勝ちに来た」のかなあ、などと穿つこともできます。でももしそうであったとしても、この公式webをご覧になればわかるとおりの濃さ、到底普通にファミリー層に諸手を挙げてオススメ、とはいきません。
 なんででしょうね(笑)
 いや、ファミリーでご覧になってまったく問題ないですよ、でもこれ観に来るぐらいならコナン君観ちゃうだろうなあ。
 もし同じ脚本で、日本人のアニメーターがアニメ作品を作ったとすると……と考えて、いや到底こうはならん。おそらく主人公(アタリ君)がもっと華々しく活躍するだろうし、劇場版『999』のように突然美少年だろうし、ヒロインはもっと美少女でしょうて。それでも別に問題なくテーマを描けますしね。
 だからそういうところ、ウケそうな要素、というのは実は(いつでも)問題ではなくて、むしろ場合によっては、豪華具沢山のパスタが具の感触に舌を奪われて何を食べてるかわからなくなるように、邪魔さえする。ホントはパスタが美味しくないと具がどんなに派手でもトータルではあんまりいい印象が残らないものですが、みんなそれを見ないふり、忘れたふりをするんですよね。
 以上余談。

 ということで、コナン君もいいですがちっちゃいときからこれを観せておくと、変なオトナに育つ。

 吹替・字幕がありますが、字幕は声を当てているのがハリウッドスターばかりで、トレーラー観るとわかりますがカッコイイんだこれが。スカヨハやオノ・ヨーコも出る。
 でも監督の画作りを細かいところまで堪能したいなら、画面を舐め回せる吹替かも。吹替陣もいい感じです。
posted by ながたさん at 16:15| コンテンツ