2015年07月10日

Apple Music



http://www.apple.com/jp/music/

 ついに始まったAppleの定額音楽配信(ストリーミング)サービスです。
 980円/月、現在は3ヶ月間無料お試し期間中。
 これは望外に良いです。


 わたしこの手の「○○放題」はほとんど信用しておらず、今まで音楽・動画のみならず飲食店でも食べ放題飲み放題は避けがちでした。
 理由は単純に
「単体で金の取れる(人気)アイテムは出てこない」
「それで儲けが出るってことは別にお得じゃない」
とまあありきたりなものです。
 こちらのサービスも試してみるまでは
「また歯抜けなんだろう」
「プリキュア(の楽曲)はきっと無い」
と冷淡だったんです、が。

 レコメンド(おすすめ)てのがさすがApple、抜群に良くてですねえ。
 飲食店の例えで言うと期待せずに入ったら
「こちらながた様におすすめでございます」
とあまり食べたこと無いメニュー見せられて
「そこまで言うなら」
と食べてみれば美味い。そういうおすすめがいろんなシチュエーションに向けてたくさんある。
「きょうは夏バテですか、鱧の梅肉和えなんてどうでしょう」
「塩レモンシャーベットもいいですよ」
 自分でメニュー決めろと言われたら、あるいはバイキング形式だったら、取らなそうな、しかし「どうすか?」と言われれば取りたくなるようなメニューが目の前にあるわけです。
 なんでもこのおすすめプレイリスト、現在はAppleの/に雇われた耳利き達が手動でやったはるらしくて、リスト自体がすごくしっかりしてるんですね。
 しかもいくら食べても料金同じ。
 いやあなんか居心地いいなこの店!

 いま僕の手元で言うと、「作業中」というくくりの中でも
「集中したいときのビート音楽」
「New Age for Working」
「仕事をしながら聴く音楽:2000年代のヒッツ」
「仕事中に聴きたい:J-Dance」
「Working Day & Night」
「夢中になるピアノのメロディ」
「仕事が楽しく捗るハッピー・インディー」
「ブルーノート:1950年代」
とこう。どれもいいかんじの「ちょっと聴いてみようかな」感がある。
 もちろん人やタイミングによって変化しますよ。

 僕もどフリー歴長いもんですから、もう手持ちの音楽ソースは聞き飽き過ぎており、たまに買っても一日中そればかりしゃぶってるものですから3日ぐらいで賞味期限が切れる。
 じゃラジオかといいますとやはりラジオは(インターネットラジオでも)「あこれいいな」と思ってもしばらくすると番組が変わる、曲調が変わる。あと僕言葉屋なものですから人の声(会話)が入るとダメでして、これもラジオを遠ざける。

 あとAppleらしくUI・使い勝手もよく、iPhoneですと再生中のプレイリストの右上の方にある「+」のボタンをポチリ押すだけで端末にダウンロードしてくれるので、以降通信が発生しません。
 また既存の手持ちの曲ともシームレスに操作できます。
 言うまでもありませんがiPhone、iPad、Mac、Windowsパソコンで同じように操作可能、Android系デバイスはこの秋予定。

 まあこれも、この経験自体に飽きが来ちゃうのかもしれません。
 結局新譜を除けば「名曲」の間をウロウロするでしょうから。
 ただそれはさすがに母数がワールドワイド&オールジャンルですと、ちょっと先かな、という気がします。

 ということで、音楽マニアの方はもちろんなのですが、
「音楽聴くのは嫌いじゃないけど、しょっちゅう新譜チェックしてCDやデータ買ったりするほどじゃないな」
ぐらいの人が(僕がそうですが)実は一番フィットするのかな、と思いました。

 デバイスやサービスが生活を変えてしまうことはたまにあります。
 ウチの母の場合、ビデオデッキの頃は録画なんか本当にたまーにする程度でしたのが、HDDレコーダになったら途端に料理、園芸、映画、ドラマ、『美の壺』や『ベニシアさん』や『ガッテン』などNHKものと、ものすごい勢いで録りまくるようになり、今はキッチンと寝室で2台ブン回して家事中流し見できるものとリラックスして鑑賞するものと分けて活用しています。
 ここでポイントは母はその昔、
「録画なんてしないから」
と言ってた人物だということで、それは実は正確に言うと
「録画なんて(めんどくさくて便益に見合わないから)しない」
で、カッコの中が変化すれば(この場合はめんどくさ度がぐっと減れば)途端に録画しまくる人になる。

 ちょっと余談になりますが、最近技術・デバイス・サービスがあまりにも発達しきめ細かくなりすぎていて、「言葉」が追いついてない感じがします。人間が自分の欲望や感情を言葉(抽象概念)で表現しきれず、それによって生じる微妙な齟齬がわりと社会をギクシャクさせている気もします。これについてはまた考えましょう。
 僕がApple Musicに対していだいていた当初のイメージと実際使って感じた良さにも、上述のようにズレがありました。

 さて次は「読み放題」かな、というところで、実は既にいくつかサービスがあります。あるんですが大きな騒ぎになってないのはやはりどのサービスも対象(書籍・雑誌)が絞られている点で、そもそもまだ新刊でも紙・電子書籍同時ではないものがたくさんありますから、物理的に難しいのは難しいのでしょう。
 それでも例えば既に欧米では読み放題始めているAmazonが日本でうまいこと大手出版社だまくらかしてやり始めるとどういうことになるのだろう、と期待しています。
 ここもまた物理的な要因がとても大事で、いまでも例えば「絶版マンガ図書館」なんかで
http://www.zeppan.com
死ぬまで楽しめるほどの量のマンガがタダで読めるわけですが(こちらは広告収入スタイル)、ここわざわざ漁って日々楽しんでる人はそんなには居ない。あそう、青空文庫だってそうですね。
 これがApple Musicばりのレコメンドや使い勝手があれば変わるのか、あるいは実は書籍と音楽は根本的に違うのか。

 ゲームはスマホ・ゲームがご存知のように
「無料で始めさせてゲーム内で課金する」
が定着しつつあり、これも「プレイ放題」の一つの変形かな。

 こうなってくるとだんだんコンテンツを「所有」する意味が薄れてきます。あるいは「私は非常にコミットしていますという証」だけの意味になる。
「電子化すれば所有権ではなくデータ利用権になる」
なんて話が数年前にありましたが、それどころか流通業者にちょろちょろ払っていれば「権利」をあんまり考えなくていい、その方が楽、という時代に一気に入りそうです。
 実はこれ目新しいことでもなくて、一昔前、アナログ時代の音楽や映像はみんなFMやラジオや(貸しレコードや)ビデオデッキで録ってそれを勝手に貸し借りしたり何度も観たりコピーして誰かにあげたりしてたわけで、そこへ戻っただけのようにも思います。
 特に広告料という名目でユーザーの支払いすら隠蔽されており(もちろん広告を出稿している企業が持ってて、それを結局商品代金で払わされているのですが)昔の方が搾取、というと言葉が悪すぎますね、ビジネスとしてはより洗練されてますね。

 僕がおじいちゃんになった頃には──いや年齢的にはもうすぐなんですけど──
「じいちゃん、本棚なんて無駄なもん部屋に置くなよ、地震の時危ねぇし部屋も狭くなるだろ」
「こっ、これはわしの魂じゃ!」
とプリキュアの画集とか抱えながら喚く姿がそこかしこで観られるのかしら。だってテープ棚は死滅、CD棚も絶滅寸前、それどころかオーディオシステム一式ですら(普通の家庭では)消えつつありますからね……

 すでに定額配信系をお楽しみだった皆さんには「なにをいまさら」な感想だと思いますが、
「未来きたわー」
という感じです。
 最近よく未来くる。

posted by 犀角 at 07:23| コンテンツ