2015年11月01日

映画「映画 Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!」


http://www.precure-movie.com/

 さあ11月、晩秋ですよ、ホット・カフェオレとプリキュア単品映画の季節ですよ、謳い文句どおり、今年は豪華三本立て!

(以下ネタバレ若干あります)


『キュアフローラといたずらかがみ』(短編・3DCG)
『パンプキン王国のたからもの』(長編・2D手描き)
『プリキュアとレフィのワンダーナイト!!』(中編・3DCG)

 この順で上映です。
 結論から言えば、良かったです。(プリンセス)プリキュア・ファンはもちろんですが、特に『ワンダーナイト』はアニメファン一見の価値あり。「ついにここまで来たか」とか「これで戦える」とか、いろんな感想を持てましょう。

 三本立てはプリキュア映画としては新しい試み……ですが、そこは「まんがまつり」を何十年も繰り返した僕らの東映、テイスト替えと尺や製作リソースの配分がとても上手く、いろんな味が楽しめてかつ飽きさせない。プロデューサ陣に鷲尾さん(プリキュアのお父さん)が帰ってきてるのも大きいのかな。
『プリンセス』は春オールスターも今までにない歌番組形式でしたし、新しいものにトライさせてもらう(あるいはさせられる)恵まれた(?)作品のようです。

 私のような年嵩のオタクが「三本立て」と聞くと『県立地球防衛軍』を観に行ったら留美子先生の『炎トリッパー』はまだいいとして『ザ・ヒューマノイド』を見せられてポカーンとした、あの若き日を思い出すわけですが、ま、あんなことはない。誰に言っているのか。主題歌、忌野清志郎でしたね。

 ということで企画としては事前の懸念を吹き飛ばす当たりじゃないかな、と思いました。以下作品ごとに少し詳しく。

 トップの短編ですが、プリキュア映画には未就学児のような「小さな子が喜ぶ要素」が必要です。いつもがんばってなんとかねじ込んでいるのですが、今回はその役割を短編が担当。派手な動きとギラギラした絵柄のデフォルメ・3D作品をマクラに持ってくることで、「場をあっためる」ことに成功していました。

 絵と演出のテイストは露骨にディズニー/ピクサー式のアメリカンなもので、むしろ真っ向から
「いやこんなんはやろうと思えばいつでもできるんですよ」
と挑発してるかのようでした(笑)
 とてもいい感じです。
 プリキュアのSDキャラといいますと、2011年夏の『プリキュアオールスターズ DX 3Dシアター』、おもちゃのメロディとリズムがプロローグを務める短編ダンス作品を思い出すわけですが、あれと比べてもたった4年でモデル・モーション・撮影全てにおいて長足の進歩を遂げており、まあ人は進歩するんだなあ、と感慨にふけります。

 そしてメインの長編。
 いつもより短編・中編の分、尺がおそらく15分ぐらい短いので話的には「中盤一回ひねり」が無く、そこが大人にはちょっと物足りないかもしれませぬが、まあこれは子どもたちのものですから。
 僕個人的にもあんまり無理くり「ピンチ作る」の好きではないので、このぐらいスッキリしている方がいいです。
 ただしその分、物理的にしょうがないのですがせっかくのパンプルル姫の描写、および彼女とプリキュアとのふれあいがだいぶ少ないので、そこだけは残念。去年の『ハピネスチャージ』映画のつむぎちゃん、『スマイル』映画のニコちゃん、『ハートキャッチ』映画のオリヴィエ、ポテンシャル的にはこのあたりの印象的なキャラにも負けるところではなかったかと思いますので、もったいない。CVの花澤さんの演技も良かったです。ま人気者ですからね、遠からず正規プリキュアにもならはるでしょう。

 絵的には監督・座古さん、作監キャラデ・香川さんの『フレッシュ』コンビ、安心して観ていられます。香川さんの絵はスタイル良くて、カッコよくてセクシーなんですよ。特にスカーレットの凛々しさなんかがいいですなあ。
 もちろんTV本編でおなじみの手練原画陣も多数参加、アクションよく動かしアップも可愛い。
 いやあ手描きっていいですね!
 オタク的ツボとしては、映画スペシャル要素を混ぜ込むために(TV本編ではCGの)大技バンク・最終フォームが手描きになってるあたり。「あー手描きや」とか感心してました。
 いや別に感心するところじゃなくて、一旦CGで始めると全部CGでやらんといかんくなるので小変更が逆にクッソめんどくさい、というCGパートの泣き所なんですけどね。

 ラスト近辺で虐げられていた人々が立ち上がってレジスタンスするあたり、ちょっと『フレッシュ』を思い出して泣けました。
 帰ってきた時の(置いてけぼりにされた)ゆいちゃんの小さな逆襲も可愛かったですね。

 予想外の仕上がりで驚いたのは最後の中編です。
 長編が終わって十分納得したので「蛇足では……」と訝しみながら観始めればこれが素晴らしい。
 話はシンプルなのですが、なんといっても絵。
 動きも絵面も、日本伝統の2Dアニメと、向こうから来た3DCGの、美味しいところを見事フュージョン。太く適切に色トレスされた輪郭線が入るだけで、日本人の目にはこんなにも落ち着くものかと。また過度に反射をテラつかせない表面処理も見良い。立体感はあるけどありすぎず、でも「トゥーンシェード」というほど2Dに寄せてるわけでもなくちゃんと3D。
「ああ、やっと」
という声が出そうになりました。
 何年かかりましたかここまで来るのに。
 演出、芝居の方も短編よりもぐっと抑制を効かせつつ、でも3Dで無ければ超めんどくさそうな部分(回転とか、多数の敵が襲いかかるとか、細い階段を上下左右に走り回るとか)もたっぷりある。

 これがあの『ふたりは』で2004年にもなってあのクイーンを出してた東映3Dチームの仕事ですよ。
 繰り返しになりますがたった10年で、ここまで。
 いやまあ『フレッシュ』のEDぐらいで既に相当な域に達してましたけどね。先人達がコツコツ積み重ねた上に、宮本浩史という才能を得て花開きましたなあ。

 夜しか無くなった国、ということで三日月の並ぶ背景をはじめ、美術もなかなかにセンスが良い。これはモデリングの方かもしれませんが、キャラのコスチュームのテクスチャがおもしろかったです。「あっ、そこはそういう素材なんだ」と。これも2Dではなかなか難しいところ。
 声、レフィ役の上垣さんも少女らしくて可愛かったし、対比するようにおひさしぶりのピーちゃん(中尾さん)の相変わらずの怪演も効いてました。

 とどのつまりはこの作品、東映はいつでも、「ピクサーみたいなの『ではない』」、見た目も演出も「ジャパンオリジナルの3Dアニメ長編映画」それも世界戦を戦えそうなヤツ、をやれますよ、という宣言文、挑戦状のようなものです。
 そりゃ楽しみです。
 ぜひ。
 ぜひ。

 ということで三本まとめてもよし、単品で観てもよし。
 いつものように、時間一杯ガッツリのめり込んで、映画館の明かりが点いたら「ふー」と溜息が漏れる緊張感はないです。でも3本観終わって、
「あー、楽しかった」
と満足感に浸れる、そんな時間でした。
 よいよい。
 プリキュアはそれでいいんだ。

 さて映画を観終わって、ホット・カフェオレに軽く砂糖をふりかけて沈思黙考。

 歴代のプリキュアは「プリキュアらしくないところ」を、なぜか初代から既にどこかに持っています。そここそがシリーズとして長続きし、これからも続くであろうポイントなのでしょう。そこで差別化できる、つまり飽きさせませんからね。

 TV本編を観ていると今作『プリンセス』にもそれが確かにある。どことなく「プリキュアくさくない」。でもいつもバランス良く絵も話も演出も抑制が効いてて、プリキュア文法にも則っており、これ以上プリキュアらしいプリキュアも無い、はずなのに……
 映画3本観てようやくわかりました。
『プリンセス』はキュアフローラ、すなわち春野はるかのお話なんですね。
 これ初めてなんですよ、いつもセンターは確かにいますが、一応全員に等しく光が当たる。「○○プリキュア」の話。これは違う、「はるかの話」なんです。映画も同じ。この3本のヒロインはパンプルル姫でもレフィでもなく、フローラでした。
 もちろん良い悪いの話ではありません。
 ただ、作品というものは一度生み出されると、勝手に成長して、勝手に個性が出てくるものだなあ、と。
 考えてみれば「生命」というものはそういうもので、つまりそういう作品でなければ「生命」力がないのでしょう。

 というようなことで、『プリンセスプリキュア』は良い作品だと思います。

posted by 犀角 at 23:57| コンテンツ