2016年02月29日

『Go! プリンセスプリキュア』から『魔法つかいプリキュア!』へ



http://asahi.co.jp/precure/princess/index.html
http://asahi.co.jp/precure/maho/index.html

 バトンタッチのシーズンですわよ諸兄諸姉。


『プリンセス』はとても丁寧に作られた良作でした。
 仕掛け的にアグレッシブだった前作『ハピネスチャージ』に比べると、絵・脚本・芝居と鬼面人を威すような大ネタを奮うことなくオーソドックス一辺倒。ホームラン狙いの大振りはせずバットを短く持って鋭く振って確実に当てる。最初から最後まで、物語の根幹から日常のディテールまで安心して観ていられる作品です。

 だからまあそこが良し悪し。

「刺さる」という表現がありますが、感情を揺さぶられ突き動かされるような瞬間が欲しい方には若干物足りないかもしれません。でも日曜の朝から4歳5歳の女児が観るのに、目の前で3年ぶりに会った父親が自分を庇って爆死したり(『ハートキャッチ』)、想いを寄せた男性が元カノとヨリを戻すのを手伝う羽目になって号泣、しかもそれが自分を想う男子の目の前(『ハピネスチャージ』)などという修羅場を見せられるものどうかなあ、といえばどうかなあ、なので、「安心」というのも大きな性能だと思います。
 この点で言うとプリキュア12年10シリーズで一番。

 最近「食べやすい」っていうのは「おいしさ」の一要素だと思うようになりました。歳かなあ。

 センターのはるか(フローラ)の成長物語にフォーカスを当てている点もプリキュアとしては珍しい。プリキュアはわりと公平にメンバー全員に重み付けをするのですが(もちろんセンターが話回すことが多いのですが)、今作は登場人物みんなで(敵役のクロースまで含めて)わっしょいわっしょいとはるかをグランプリンセスに持ちあげているようでした。
 これもまた良し悪しで、その分本当に胸の詰まるような作劇はほとんど無い(できない)んですが、反面とても平和でおだやかな世界です。
 作劇というのは究極つきつめれば谷に落として山に持ち上げるもんですから、元々高いところに居ると落としても平地だし上げても元に戻るだけ、なんですな。
『5』ののぞみ(ドリーム)達と比べるとよくわかるのですが、のぞみ以外はそれぞれデザイナー、アイドル、小説家、医師(、お世話役)になろう、と夢に向かって一応邁進してて、のぞみだけがその名に反して夢がない。やりたいことがわからない。それが最後に見つかる……
 これが普通の作劇です。
 でもはるかには最初から「プリンセスになりたい」というケッタイな夢があってそれに向かって驀進しており、周囲もそれをものすごくブ厚くサポートしている。で、何か起こっても、すぐバネのようにびよ〜んと元に戻る。
 このことを、つまり「夢さえあればなんとかなる!」を持ってして「夢の大切さ」を訴えている。
 構造としてはスポ根モノと同じです。「オレはメジャーのエースになるぜ!」だから最新のアニメのはずなのに、なんとなく懐かしい感じがするんではないでしょうか。
 それを2015年に「ちょっと厳しいな」と感じる人もいれば、「いやむしろ一周回ってありだろこれから」と思う人もおられましょう。
 あるいは、「夢」という言葉や概念に対してどのような接し方を普段その人がしているかにもよるかも。転けつまろびつ目標ににじり寄る姿にものすごくリアリティを感じる方もおられれば、そこをこそあまりに都合の良いお伽話と捉える方もおられましょう。

 僕ですか?
 きららちゃん可愛いからいい。
 プリキュア41人で初の小悪魔系、堪能させていただきました。
 いいでしょこのタイプ。

 フィジカル面では、作画の安定感はシリーズで一、二を争うデキ。演出も「今日ちょっとな」的な回は思い当たりません。田中裕太SDのガンバリが光ります。
 も絵と芝居はねえ、監督がどんだけコダワリ抜くかしか無いですからねえ。
 高木さんの音楽も、今回が一番作風と合ってるんじゃないかな。
 脚本屋としては構成の田中仁さんがポイント回を全部こなして、あとはすべて女性陣で回してたのが印象的でした。そのせいか優しくおだやかな印象が強くあります。雰囲気では『SS』なんかが近いかも。
 ちょっと凝り過ぎかもと思うほど華やかなCGも含めて、物理完成度では文句無いです。

 穿った言い方をすればこれは、
「『お伽話のお姫様になる』というお伽話」
というメタな作品です。
「いろいろ都合が良すぎるんじゃないか」と言われれば「お伽話だから」と応えるしかない。またそう思ってみれば、凝りに凝ったお伽話と思えましょう。
 わたくしのような若輩者が言うのもアレですが、
「人生はお伽話じゃねえんだよ」
と嘯く人の人生は、決してお伽話にはなりませんぞよ。
 お覚悟はよろしくて?


 ということで『魔法つかい』です。
 だいたいいつもクリスマス頃になると次回作の情報が漏れてきて「ギャーッ」とか「ワーッ」とか雄叫びを挙げるのがプリキュアファンの恒例行事なのですが、
「魔法使い!? プリキュアってのはそういうのを否定して生まれた拳と拳の物語じゃないのかよ!」
とひっくり返ったものでした。
 なんでもすべての「魔女っ子」のお姉さんたるサリーちゃん(もちろんメイクは東映)から50周年だそうで。

 んでもキービジュアルが大変わかりやすく華麗、しかも久しぶりの2人始まり。えーっと『スイート』以来だから5季ぶり4組め。キュアネームも「ミラクル」に「マジカル」と大物ぶっこんできた感ありでよろしい。
 まあ毎年のことですがプリキュアは始まってみないと……

 で始まってみれば上記の懸念は杞憂、
「伝説の魔法つかいプリキュア」が殴る蹴る。
 魔法なんか使いやしない。
 ああプリキュアはプリキュアでした。
 2人揃わないと変身できないのも初代『ふたりは』と同じ。2話ですが空中に魔法陣を出してそれを反転踏み台にするカット、これは初代のOPで有名な「鉄塔見得」カットへのオマージュ。さらに黒い手と白い手がギュッと握りあってSEが鳴る、これこそまさに初代の必殺技マーブルスクリュー。ていうかEDで
「総作画監督:為我井克美 作画監督:稲上晃」
の文字を見るだけで「ああまごうことなきプリキュアや」と落涙せざるを得ない。

 だからプリキュアだって。

 プリキュアはまずお話の全体像を見せて、最終目標に向かって一歩ずつ進んでいこう、とすることが多いのですが、今作はわからないところからちょっとずつ見せていくタイプ。巧く作れれば「次どうなるかな」と楽しみになる作り方で、実際4話終わって5話を待つ時点ではワクワク感あります。
 従来のシリーズでは平凡な日常にプリキュア活動がある、というギャップに萌えるそして燃えるわけですが、今作は日常からして「別世界の魔法学校に入る」という非日常。ギャップは薄いですがいわば全編ファンタジーで、こりゃ小さいお子さんは喜ぶでしょう。

 そうそう、この2人は変身前後で顔が変わって頭身が上がる、年齢も上がるのですが、これは(エースを除けば)初です。プリキュアは髪色髪型眼の色は変わっても顔の造形は変わらず、が伝統だったのですが、これやっぱり「魔女っ子」の文法を意識してるんですかね。

 4話ではそれぞれ欠点持った個性的な学友が出てきて、
「お、これは『コブラ』のラグボールですか」
と盛り上が……なぜそこでそれか。他にいろいろあるやろ。
 追加戦士はあるのか、それともこの友人たちが2人を支えるような形になるのか、人間界と行き来するようになったらリコちゃんはどういう生活をするのか、なんでプリキュアの男どもは胡散臭いか頼んないかどっちかなんだ、などいろいろ楽しみです。

 プリキュアがプリキュアたるゆえん、それは僕個人的には
「目の前に困った人がいた時に、
『じゃあ私やります!』
と言えるかどうか」
だと思います。
 みらいちゃんはそれができた。
 そう、なぎさからはるかまで歴代のセンターはみんなその瞬間、
「やります!」
と変身アイテムを手に取ったんです。
 これがプリキュアです。
 だから第1話観ないとわからないし、1話観ればわかる。
 バカ丁寧な作りである意味でこれまでの集大成と言っていい『プリンセス』のあと、伝統を強く踏まえつつも殻をバリバリ破ってる感もあって、いいかんじです。

「キュアップ・ラパパてなんやー!」
「プリティでキュアキュアやろがー!」
posted by 犀角 at 03:20| コンテンツ