2016年03月23日

黒船か


 今日は4インチリボーンな『iPhoneSE』のお話で。
 もう半年早く出しててくれたら大きくて重い6sなんか買わなかったよ!
 あでも手帳型ケースに慣れると気にならなくなってきたのですぐ買い直すことはないと思う。

 ではなく。


http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20160322_749198.html

 電気自動車(EV)のお話です。

 もうEV「ベンチャー」などとは言えない存在感になってきましたテスラが、3つめのモデル「モデル3」を発表するようです(正式名称はまた別でしょうけど)。上記記事ご参照。
 ポイントは価格でなんと$35,000。日本円にして400万弱。
 誰でもが、とまでは言えませんが、このご時世に新車を買える世帯ならちょっと思い切れば出る額です。人気大型ミニバン、トヨタのアルファード/ヴェルファイアでもそのぐらいのグレードが良く売れますからね。

 EVのコストで大きいのが電池です。
 で、その電池の値段が近年劇的に下がっている。
 聞くところによると5年で1/5ぐらいだそうです。実際たまたま僕が2010年末に買ったモバイルバッテリ(SANYO製)、
「5000mAhで5680円」
でした。5年後のいまAmazonで同じようなのを検索しますと、
「10000mAhで2600円」
(Anker製)なので、4.4倍ほど単価容量がアップしています。ファイナルカスタマーでこのぐらいですから、メーカーへの大ロット納入価格でしたらもう少し安くなってるでしょう。テスラはPanasonicと組んで電池工場をアメリカにブッ建てるぐらいですし。

 そのテスラのそもそもの戦略というのが、

「18650型という汎用セルを使って」
=汎用セルはコストパフォーマンスが最も良く、技術の進歩(の反映)もおそらく早い
「ガソリン車に遜色ない航続距離を実現する大きな電池容量をむりやり載せ」
=充電施設の自前整備もあって、使い勝手でガソリン車と変わらない
「結果なってしまった大柄な車体と高コストは、『凄そう』というブランディングをしつつ胸を張って高価格を付ける」
=新しもの好きの富裕層はむしろその方が嬉しい

 で、知名度と存在感を高めつつ、実際にEVのメカと生産、ビジネスのノウハウを蓄積して……
 そのサイクルがいよいよ本調子になりつつある、という感じです。

 テスラの工場は元NUMMI(GMとトヨタの合弁会社)の工場なので、50万台ぐらいまではイケるそうです。いまはまだそこまで体制が整ってないそうですが、キャパとしてはそれぐらい。ちなみにスバルの去年の生産台数が100万いかないぐらい、MINIで30万とかそんなもんですので、達成できれば50万はプレミアム・メーカーとしては十分存在感のある数字です。
 マツダでも100数十万台、BMWでもこないだ初めて200万超えて赤飯炊いたぐらい。Appleが年間2億台とかiPhoneを売りさばいてることを考えますと、数的には小さいもんですね自動車メーカーって……っていうか、既に工業製品の「キング」の座は降りてる感じですな。

 EVのいいところはガソリン/ディーゼル車と比べて圧倒的に部品点数が少ないところです。全体で1/5とか。部品点数が減ると作りやすくなる上に安価にできますから、例えば中国で超安くガチャガチャ量産できる。
(中国は今や年2400万台もクルマを生産しています。日本は700万ちょいぐらい)
(日本の)大手メーカーが恐れているのはどちらかというとこちらで、だから自社技術で差別化できるHV(ハイブリッド車)とか、FCV(燃料電池車)とかに力を入れている……のだと思います。
 テスラはその点で「いろいろノウハウがあるからそう簡単には真似できない」と言いますが、さあどうでしょう。それよりも自動運転など付加価値を高く付けて高めの(といっても2倍以内ぐらいの)お値段で売っていくつもりかも。スマートフォンにおけるAppleの戦略で。実際、EVの特許をずいぶんオープンにしてるそうです。

 色とりどりのiPod miniがデビューした時に、それまでマニアの持ち物でしかなかったシリコンオーディオが一気に人口に膾炙したように、「モデル3が転機だったね」と言わしめるモデルになるかもしれません。
 使い勝手(航続距離)的にガソリンと変わらず、自動運転など未来感たっぷりで、輸入車で珍しい特別な感じもあって、お値段も現実的、となればこれは売れそうです。
 インパクトのあるモデルが出れば、市場全体に人の目が向きますので、たとえばライフスタイルによっては今すでに十分役立つ日産リーフ(言うまでもありませんが純粋なEVです)なども売れ行きが伸びるかもしれません。
 実はリーフも好調で、世界累計販売が5年で20万台を超えています。プリウスは20万を超えるのに初代から数えて9年掛かったそうですから、たいへん順調と言って良い。
 プリウスは今や押しも押されぬ日本のエースですが、月販1位を獲ったのは3代目(先代)デビュー直後の09年6月、つい最近です。97年の初代発売開始からなら12年も掛かってる。ところが年間1位は翌10年。これが90年のカローラを抜く歴代最多31万5千台。
 最近のプロダクトは一旦火がつくと止まりませんね。ぜひ次期型リーフ(来年との噂)ではモデル3なんぞに負けないすごいヤツをやっちゃえ日産。

 EVは電気を使うから環境負荷が高そうだ、というのは正解でもあり誤解でもあるようです。(試算にもよりますが)確かに原油を中東から運んでガソリンにして直接使うのと、天然ガス火力発電所で電気作ってそれを送電してクルマにチャージして使うのとでは、実はカーボンフットプリントで言うと変わらないかむしろ悪いケースもあるそうです。が、それも例えば家の屋根に太陽光パネルを置いて、その電気をチャージすれば逆転できますし、逆に商用電源から夜間にチャージすれば電力需要のオフピークに貢献します。社会全体としては負荷が下がる。
 なにより、EVはもちろんのことプリウス・シリーズなどトヨタHVにお乗りの方はご存知の通り、
「クルマが(電気で)スーッと動き出す」
のを体感すると、もうエンジンなどという騒々しくてウェットで面倒くさい、つまり野蛮なもの、に触れたくもない。逆にクルマというものは本来こうあるべきであって、エンジンとか(トランス)ミッションとかわけわからんもんなんで載ってんねや、と。
 レコードがCDになった日のことを覚えていらっしゃいますか。
 お若い方だともう「CD?」てな世代も出てきてるのかな。
 ともあれあの瞬間、なんであんな黒くて大きくてかさばって取り扱いに神経を使う、簡単にいえば「めんどくさい」円盤を振り回して針を慎重に落としていたのか、意味がわからなくなりましたよね。そして(マニア以外は)もう戻らない。
 EVはそれに匹敵すると思います。

 FCVですか?
 たぶんインフラ整備が間に合わない。
 EVの充電器なんかモノ数十万のオーダーで工事は電線引いてくるだけですが、水素ステーション2億掛かるらしいですよ。誰が整備すんですかそんなもん。
 システムとしては多少優れていても、非主流派に落ちてしまうと価格性能比で負けてその差がぐんぐん開いて取り返しがつかない、というケースは今までいやというほど見てきたではありませんか。
 水素活用社会のヴィジョンそのものは悪くないと思いますし、いま捨ててる=タダの水素をエネルギー源にできれば特に日本のエネルギー事情からするととても良さそうではあるのですが、でも冷静に考えると、そんなことができるならその捨ててる工場かなにかの敷地にFCをズラッと並べて発電して、自家消費して余った分売電すればいいではないですか。
 それができないのはなぜです?
 それどこにも書いてないんです。
(天然ガスに混ぜて燃やす方法もあるそうですが、火力=カロリーが落ちちゃうのであまり効率的ではない)
 結局、「水素社会」というヴィジョンを実現するために補助金や利権が発生して、そこにむしり取ろうとする人々が群がってるだけじゃないかなあ。
 メーカー的には、FCVは要は「バッテリの代わりがFC」という構造で、基本はEVなのでEVのスタディにもなるし、いざとなったらFC外してそこにバッテリ積み込んでEVとして売りゃいいので(大雑把な言い方ですが)、いわばローリスク・ハイリターンな賭けだからやってるように思います。
 あとFCVに熱心なトヨタとホンダはそれぞれ家と汎用機があり、「スマートホーム」というと太陽光パネル屋根に載せて電気起こして逆FCで水素起こして昼間チャージして夜使えばオフグリッド(電気系統から独立する)、みたいなイメージ図も描いているんではないですかね。
 でも、あんまりそんなどうでもいいことに引きずられると、ATRAC3に固執して滅びかけたSONYの二の舞いになるよ。
 FC(燃料電池)そのものの技術が発達するのはいいことだと思うのですが、高圧水素タンク&水素ステーションインフラ込みで自家用車に載っける、というのはどう考えても筋が悪い。

 くどいようですがあっという間なんですよ「黒船」が来ると。
 黒船来航から大政奉還(明治維新)まで14年ですよ。
 もうそんな、「徐々にインフラ整備して」とか言ってる間にみんなファミマの駐車場で充電してる。
 無接触充電の技術自体は既にあるので、「後車軸から何mmから何mmの間で……」みたいな規格決めれば、コンセント引っ張ってくる必要もない。決済もスマホでやればお店入る必要もない。

 また黒船は外からやってくるのか、と思うと(いや外からやってくるのを黒船と表現するのですが)なんだか悔しいですが、都市部の住民としては静かで空気を汚さないEVが増えるのはたいへんありがたいので、そういう時代がはよ来て欲しい。
 でまあ、その「黒船」がこの「モデル3」かも、というのが今日のお話。

 以前はこのお話になると「しかしその前に『エンジン』を『ミッション』で」とか喚いていたのですが、最近歳を取って人生の時間の有限性に気づいたのか、そんなことになったら真っ先にEVに乗りたい。「モデル3」、カッコイイといいなあ。ある程度カッコよければ(心斎橋の)ショールームぐらい行っちゃうかもしんない。
 いまお金ないから買うのは無理だけどー。
 ホンマFワード円高やで、80円なら280万やんか。
 まそれでも買えんけど。
posted by ながたさん at 03:27| 雑記