2017年02月04日

本『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』 ブレイク・スナイダー



 みんな忘れてるかもしれないけど私脚本家なのよ?
 はいもう忘れてください。

「脚本術の本」は実は結構(黙って・恥ずかしいから)読んでいるのですが、正直あんまり役に立った記憶がありません。でもこれはちょっと違う。さすがベストセラーそして(当時バリバリ)現役ハリウッド脚本家。

 戦争(制作現場はだいたい戦場です)には「戦略・戦術・戦法」のレベルがあるとよく言われますが、その「戦術」のレベルで参考になる。
 脚本の人間のみならず、制作現場の人ならDやPはもちろん、役者さんプログラマ絵描き音屋エンジニアから制作広報、どなたでも目を通しておいて損はなし。
「なんか一味足らんな……」
という時にパッと開くリファレンスになる、やも。

 村上龍先生だったかな、がおっしゃってるのですが、
「つまるところ『崖から落ちて這い上がる』」
 脚本というのはそれだけのことです。
 が、それだけでは心許ないのでスナイダー先生が具体的に・詳細にまとめたのが(悪名高い)15ブロックの「ビート・シート」です。これを埋めていけばちゃんと一本できるようになっている。
 まさに必殺虎の巻。

 なぜ悪名が轟いてるかといえば、ご想像どおり、構造が同じ、ということはつまり、おんなじようなものしかできないからです。
「ハリウッド映画はつまらん」
は、たぶん昔から言われてることなんだろうと思いますが、「映画館で映画を観る」という行為が相対的にえらく贅沢なものになった現在、「かけたコスト分ぐらいはリターンが欲しい」とお客さんは思い、出資者もそれに応えたい、と思うと、自然とこういう「鉄板構成」になってしまうのでしょう。
 スナイダー先生やビート・シートが悪いわけではない。

 しかしですな。
 ぶっちゃけ脚本は劇作品の一部にすぎず、カチカチの標準構成でも世界観が珍しかったり、主役が可愛かったり、画面が超美麗だったり、音楽が泣かせたり、他いろいろでなんとでもなるもんです(ひとまかせ
 それは古典演劇がいまでも生命を持つことで証明されているでしょう、話の筋がそんなにだいじなら『忠臣蔵』なんか誰も観んし、何回放送したかわからんジブリ作品をまた金曜日に観たりせんわ(逆ギレ

 つまりそれが戦術の上、「戦略」のレベルの話です。大雑把な言い方をすれば「企画」、そこで実は作品の魅力はおおよそ決まる。

 というのはスナイダー先生もわかっている、からこそ原題も、
『SAVE THE CAT!』
 これが何を表しているかといえば、主人公に感情移入させるためのテクニックのひとつなんです(他にも多数映画全体に関わるテクニックやチェックポイントが載ってます)。
 つまり、主人公がイケてりゃけっこうイケる。
 脚本でもキャラクター造形に踏み込めば、作品全体の魅力を高めることができる。もしくは、逆に言えば、そこまで踏み込めないと作品は締まらない。

 日本のオタク・コンテンツの場合、キャラクター造形がお話に優先するのはよくあることですが、それでもまあ多少は弄れるので、なんとかおもしろくしよう、と今日も明日もライター達はわりと大変な思いをしてるんです、よ? いやホントに。

 それはともかく守破離で言えば「スタンダード」を知るのは基本、作り手でなく観る者としても、「どうやって作っているのか」が垣間見れれば観るおもしろさも増えましょう。
 ……減るかな?

 僕はとりあえず書棚に挿しておこうと思いました。
posted by ながた at 05:02|