2018年06月30日

ワールドカップ2018ロシア グループリーグ雑感



 朗100%「ヒヤヒヤしたんじゃな〜い?」

 安心してください、突破してますよ。

 とりあえず近年の第一目標であるグループリーグ突破を現実のものとしたのでホッと一安心。どこから行きましょうか。

●監督交代
 後出しジャンケンになってしまいますが、交代は致し方なかったと思います。

 といいますのもハリル監督は最終予選突破を決めたオーストラリア戦をピークに(これもオージーたちがなぜか自分たちのストロングポイントであるパワープレイを勝手に封印してくれてた)、それ以降確とした形を見せることができていませんでした。

 サウジに負けたのは突破を決めたい向こうの気迫、という言い訳が立つにしても、ハイチに分け、貴重なブラジル戦ベルギー戦はただただ無為に消化、E-1では北朝鮮戦・中国戦とも勝ったといえ井手口や小林・昌子が個人技で取った点、案の定韓国に惨敗、と僕はここで交代でもいいと思ったぐらいです。
 で、マリにほぼ負けのところ中島のシュートに救われて、ウクライナに普通に力負け。
 協会はよく我慢したと思います。むしろ多くのサッカー好きは「替えるなら遅すぎる」と思ったはず。親友の田中支店長(高校時代は名門でサッカー部の主将を務め、左利きの右サイドバックでありユニがACミラン・レプリカだったことから「鏡の国のマルディーニ」と讃えられた男)も単身赴任先から帰ってきてC大阪戦を一緒に観た時に
「まあしゃあないな。この時点でチームの形ができてへんからな」

 彼の言い分的には「最後の1ヶ月で仕上げるんだ」なんですが、呼べる選手はほとんど既に呼んでおり、形も4−3−3速攻系しか引き出しがない中でこれ以上は難しい、と判断したのでしょう。
 正しいと思います。
 あのまま行ってて何が起きたかと言うと、おそらく今回で言えばイランかモロッコあたりの戦いっぷり、コロンビアとセネガルには個の力でねじ伏せられ、ポーランド戦で監督の言うこと全部無視して1点取って取られて引き分けて勝ち点1敗退、てなところだと思います。

 日本もそうなんですが、メキシコをそのリーダーとする「中堅国」というグループがあります。
「大陸予選を勝ち抜いてワールドカップには出られるけれど、本戦ではなかなか勝てない」
 今回グループステージで敗退した各国はだいたいそうです。モロッコとかチュニジアとかコスタリカとか、あと韓国もそう。
 ここには構造的な課題があって、予選では「自分たちのサッカー」ができるわけです。韓国でいうと縦に速くフィジカルに優れたサッカー。お家芸十八番、最後に頼る戦い方。慣れてる分上手いので、なんのかんので平均すれば勝ち点が積み上がって、予選は突破する。
 ところが本戦ではだいぶ格上1、ちょっと強い1、うまくやれば勝てる1、と戦わねばなりません。ここで「自分たちのサッカー」がなかなか通用しない。
 韓国のケースでいうと、フィジカルとダイレクトプレーではドイツとスウェーデンに敵うはずもなく、残るメキシコはパスサッカーと試合巧者っぷりでお馴染み。
 じゃどうすんねんと。
 自分たちのやり方を磨いて、相手がどこだろうと勝ちと分けを1つずつなんとか拾って勝ち点4、突破できるかどうかはもう天に任せる、のがひとつ。
 これがいままでの日本代表。
 そういうのは捨て、ワールドスタンダードで弱者が強者に対抗する時に使うカウンター主体の戦い方を磨いて、強国でも一発食わせて勝ちうるぞ、というやり方もひとつ。
 これが(おそらく)ハリルホジッチがやりたかったこと。
 なので、彼がやろうとしたこと自体には問題ないですし、おそらく協会も早めに首を切らなかったのは、「コンセプト自体には問題ない(好き嫌いは別)」という判断だったんでしょう。
 ただし、いつまで経ってもちゃんと確立しなかった。
 ギリギリでハリル監督ごとその路線を捨てた。

 じゃあ、日本としてはおなじみの、中盤厚くしてできればポゼッションしてパスを散らし、比較的優秀なOMF陣がなんとか敵陣を混乱させて混戦やセットプレーから点をもぎ取る……
 に戻るとするなら誰ができるか。
 その場合、西野朗以上の存在は世界中探しても居ないですし、ラッキーなことに技術委員長としてチームをずっと観てましたし、まあ「マイアミの奇跡」からガンバ時代を知ってるサッカーファンも「まあ西野さんなら致し方あるまい」という感じ。
 現実問題、ハリルを切って別の外国人を連れてくる場合、「あのクラス以上で」「空いてて」「2ヶ月前から」「日本を」率いてくれる、なんて四重苦を引き受けてくれる可能性はほぼゼロ。
 また日本人で、となれば、手倉森はともかく森保はだいじにしたいこれからの人材、われらが岡ちゃん(天高出身)はこういうおぞましい事態を予見してたのか指導者ライセンス返上済み(たぶん要らないんですけどね)。
 いや、「変えるなら西野しかない」という状態でした。

 実際、トルシエのあとはジーコ、オシム、岡田二期を挟んでザッケローニ、とビッグネームが続いちゃったのでなかなか声が上がらなかったですが、アギーレと聞いた時には
「そのぐらいやったら西野、関塚、森保(あるいはまた岡田)といろいろ居るよ」
と思ったもんです。日本代表のクオリティもだいぶ上がっているので、今後はアギーレ/ハリルホジッチ・クラスの「弱小国で16強」狙い監督を呼ぶぐらいなら、日本人のがいいんではないでしょうかね。
 オシムがそうだったんですがネルシーニョ、トニーニョ・セレーゾ、あるいはレヴィー・クルピ、いまならペトロヴィッチ、といったJで日本のサッカーをよく知ってる方を、という線ももういいかなあ。
 もちろんペップだモウだクロップだ、てクラスが来てくれるようなめぐり合わせがあったなら、食いつくのもありだと思いますけど。

 それが今回の教訓で、
「もうこのクラスやったらええわ。話ややこしなるだけや」

●西野さん

というようなことで、西野さんがなにをやったかというと、3試合掛けて日本代表のお家芸、上述の「一応ポゼッション」志向、4-2-3-1で厚い中盤をベースに戦うやり方へ戻していったんです。

 久保、中島の落選が軽く話題になりましたが、この両名は4-3-3のウイングで輝くタイプで、4-2-3-1の3の両ワイドとは若干違うタイプ。本来的には乾と宇佐美もウイングなんですが、まあこの両名は経験値が大きいのでアジャストできるだろうと。
 本田も4-3-3速攻系では正直ポジションが無いのですが(個人的には能力的にもキャラ的にももう2年ぐらい早めにボランチ/セントラルMFに移動してた方がよかったと思いますが、まあそれは本人の考え方なので…)4-2-3-1ならトップ下もしくは3の右サイドでやれます。当初コンディションがすごく悪そうでしたが短時間なら、あるいは一本のキックでも(というのが大当たり)。
 あと香川も同様にトップ下というほとんどそこしかできないポジションが復活すると同時に大復活、ボランチも2枚になることで長谷部の相方に攻撃的な選手を起用でき、それが柴崎の大暴れを呼びました。ここには大島も控えており、もし高齢のキャプテンに何かあってもその2人とディフェンシブな山口を組ませればいい。

 で、毎回私言ってますようにサッカーというのは攻守が一点・一瞬で切り替わるスポーツで、そこを押さえると劇的に有利になる。そのポジションはハイプレスの場合は攻撃的MFだったり、ペップのチームだったらサイドバックだったり、いろいろあるのですが基本的にはセントラルMF/ボランチ。ここに視野が広くキックが正確で、大きな展開ができる選手を配置できれば俄然有利になります。
 そのタイプの選手が居るか居ないかで1ランク上に行けたりするぐらい大きい。
 遠藤が居た時の日本代表は強かったでしょ?
 あれ。
 つまり遠藤の後継者がやっと見つかったわけです。
 シャビ・アロンソを失ったスペイン代表が、ピルロを失ったイタリア代表が、デシャンを失ったフランス代表が、(ボランチではないですが)ラームを失ったドイツ代表がどうなりましたか。
 あれですあれ。

 レアル・マドリーが強い、バルサが強い、と言う時に華やかなFW陣、特にクリロナとメッシに注目が集まりますが、その2チームの強さの源は中盤、前者にはモドリッチ&クロース、後者にはイニエスタ&ラキティッチ、という1人でも十分なのに2人共かよ!という展開型MFが居るから、です。(バルサの場合は底にブスケッツまで居る)

 余談ですがこの伝で行くとクロアチア、そのモドリッチとラキティッチがコンビ組んでるここは強い。ブラジル、スペイン、フランスといった優勝経験国以外で優勝があるとするならクロアチアじゃないかな。

 で、このタイプの選手が居るとボールを持っている時はもちろん、カウンターの時でも的確にFWにボールが入るので、迫力が全く違ってきます。そうなると守勢に回っても、相手が常にリスク管理のために人数を後ろに置いておく必要があり、守備も楽になる。
 ポーランド戦でオフェンス陣をほぼ全休憩させているにも関わらず、前2戦で大活躍の柴崎を先発させました。これは「柴崎が入っていれば攻撃の怖さは減じない」という判断だと思います。つまりチームのコア。

 4-2-3-1に戻したとしても柴崎が居なければ、おそらくこれもおなじみの長谷部・山口ペアがどっしり座ってるダブルボランチで前の4枚との距離が遠く、そこを繋ぐのはサイドバックの上がり頼み、でその長友と宏樹の上がった後ろを突かれて失点する、という懐かしい風景が繰り広げられたと思います。(ていうか現実にもここの後ろよく突かれてるんですけどね)
 その点ラッキーでした。

●相手のあることで

 今回のW杯の特徴的な点で、こうしたポゼッション・サッカーの国が極端に減ってる点です。本当に根っからそうなのはブラジル、スペインぐらいで元々はそういう傾向のポルトガルやフランス、あるいはベルギーでさえ基本カウンター。まして中堅国以下ではほぼカウンターからのFW・攻撃的MFの個人技一辺倒です。

 故のないことではなく、最近は相手チームの分析が、GPSとか画像解析とか活用してものすごいので、いまって極端に言うと
「アクションを起こせば起こすほど穴になる=損をする」
という状態です。だからボールを取ったらできるだけタッチ数を減らし、関与する人間を減らし、ゴール方面へ持っていきたい。
 ところがそれに対するディフェンス・リスク管理も進歩してて、カウンターが怖いなら、単純には人数置いておけばいい。
 ということで、中盤を飛ばしてながーいカウンターを撃ち合う、みたいな試合が多いのです。
 そうすると中盤が間延びする。
 そこに、中盤がぶ厚くてFWからDFラインまでがコンパクトな日本代表みたいな変なチームが入ってくると、中盤でボール持てるのでいいようにやれる。コロンビア、セネガル、ともにいろいろ事情はあれ、
「あれっ、こんなに持てるもんなの?」
とお思いになりませんでしたか。あれそういうことです。ポーランド戦でも前線総取っ替えなのでラストパスはあまり供給できませんでしたが、途中までは持ててましたよね。
 もちろんそれで調子に乗ると高速カウンターをぶっ放されて得点チャンスを作られるのですが、ボール持てないとそもそも何もできない日本代表にとっては、この風潮(流行)もラッキーでした。
 相手3チームともそうだったので、同じ戦い方ができました。これグループにスペインとか入ってたら5−0とかで負けて自信ポッキリ折られてたと思います。

●ラッキー

「持ってる持ってない」という話をすれば今回のアキラはノリにノッてます。

 初戦コロンビア、もちろんPKの先制も1人退場も大きいのですが、それ以上にクアドラードの交代(守備的MFのバリオスへ)、当たってたキンテーロの交代(コンディションに問題があり走れないハメスへ)が大きい。これでかなり守備が楽になりました。いかにファルカオやバッカが怖くてもボール渡らなければどうということないですからね。
 ペケルマンは名将ですがどちらかというと指導者の面が強くて、こういう勝負師的な勝負勘はイマイチな気がしますねえ。

 2戦目セネガル、W杯前のパラグアイ戦から調子がよくレギュラーとして使い続けている乾の得意の形、後半も1点ビハインドで投入した岡崎と本田が、乾のマイナスを岡崎得意の潰れから本田が決める、と「監督の起用に応えた形」です。
 これハリルだったら3人ともここに居ないよ。ベンチにも居ない。

 3戦目ポーランドはもう言わでも、でしょう。1点取られた時点で3位に転落したのに、すぐにコロンビアがセネガルから先制点取って「フェアプレーポイント」という今回新設のシステムのおかげで2位に浮上した。そのままタイムアップを狙うという決断をして、ポーランドもノッてきてくれたし、コロンビアもセネガルの最後の猛攻をしのぎきってくれた。
「運だのみ」とか「他力本願」という言葉は正確ではないです。
「こうしよう」と決断して、実行したんだから。
 そして当たった。

 ここでもちゃんとチームとしてまとまっている、ということが大事で、監督の言うこと、それを伝えてきた長谷部キャプテンの言うこと、をみんなして「しょうがない、それでいくか」と実行した、というのが素晴らしい。
 これもしアルゼンチンが3戦目で同じシチュエーションになったとして、サンパオリ監督からそんな指示出てもたぶんメッシもマスチェラーノも聞かんよ。

 ということで異様な運に恵まれてここまで来た。
 指揮官に運はなにより大事、というのは日本人なら日本海海戦に東郷平八郎を司令長官を選んだ山本権兵衛に習ったはず。
 もうちょっと幸運続いて欲しいですね。

●7/2(月)深夜3時からRound16 ベルギー戦です。

 R16を突破したことはないので(02日韓はトルコに敗戦、10南アはパラグアイにPKで敗戦)、なんとか一度勝ってみたいところ。

 ベルギーは、グループリーグの試合ご覧になった方はもうご存知でしょうが、タレントは凄いッス。特に攻撃陣。
 マンチェスター・ユナイテッドの主砲・ルカクをCFに、ちょい下がり目にナポリの小さな点取り屋メルテンス、その脇をエデン・アザール(チェルシー)+ケヴィン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)という最高級テクニシャンがゲームメイクする。バリエーションで言えば今大会1番のラインナップ、と言い切ってもいいぐらい。
 ただしこのゾーンを超えて中盤以降になるとイメージほど強固ではなく、怪我上がりのコンパニを無理くり使わざるを得ない薄い選手層。事実圧倒して最終的には5点取ったチュニジアに、2点返されてます。
 つまり点は取られそうだけど取れそう。
 現下の日本代表の状況でいうとむしろ殴り合いウェルカム、ヴィツェル一枚で薄い中盤底を柴崎・香川のセンターラインで攻略してズタズタにしてやりましょう。

 あとパナマ、チュニジアと明らかに個で圧倒できる相手を個で圧倒して楽〜に勝ったあと、メンバーほとんど入れ替えてイングランド戦はおたがい「2位でもブラジルと当たらないからいいんだけどな〜」などと思いながらお花畑でボールと戯れてたので、つまりヒリヒリの勝負はこれが初めて。
 ヒリヒリどころかビリビリを3試合戦った日本はここが有利です。
 ポーッとしてる間に先制点取って、そのまま押し切ってしまいましょう。

 もし、勝てると、次は、(おそらく)ブラジル。
 アキラの大好物です。

 ワクワクしますね。
posted by ながたさん at 20:01| 雑記