2018年08月03日

なつかしい現在(スズキ・スイフトスポーツ/6MT)




●スズキ公式
http://www.suzuki.co.jp/car/swiftsport/

『孤独のグルメ』の井之頭五郎の決め台詞(のひとつ)といえば

「こういうのでいいんだよこういうので」

 そういうものこそがなぜか無いのが現代社会。
 拙者のようなクルマバカ共がこよなく愛するジャンル「ホットハッチ」も最早風前の灯……というわけでも実は無くて、探せばノートNISMO(日産)とかヴィッツのGRRRRRR(トヨタ)とか外車でいえばルーテシアRS(ルノー)とかポロGTI(VW)とかなんとかかんとか、あるっちゃーあるんですが、それらはあまりに特別すぎて。
 なんだろう、ホットハッチてのは形、つまり「量産コンパクトのチューニング版」というのが大事なのではなく、
「やってやるぜ」
という魂が大事なんです。上に挙げたようなメンツはストイック過ぎたりスペシャル過ぎたり、つまり真面目すぎる。とうてい、「峠でGT-Rを追い回してやるぜ(もちろん本当は敵わない)」などというトコトン頭の悪い用途に向きそうに無い。

 魂が生むのは夢。そしてファンタジー。
 それを買うのよ。
 それを所有するのよ。

 カップ麺のパッケージにはいわゆる「シズル感」というのがなにより大事で、オシャレさよりもコンセプトの伝わりやすさよりも、とにかく「ガツンと腹に来そう」というのが目に飛び込む、それで棚から選んでもらえる。
 それでいうならいま日本で新車で買える中で最も「それ」なのは、真っ黄っ黄のスイスポ一択でございましょう。

 そのDには買い物ついでに新型ジムニー見に行ったのですが、昼下がりセールス出払いで対応してくれたのが若いサービスのあんちゃん。これが車好きで話弾んでいつのまにかスイスポに試乗してました。もちろん6MT。
 乗って100m走って開口一番、

「なつかしい……」

 そしてホロリと頬を伝う涙。続けて口を突くのは冒頭のセリフ、気分だけは栄光の1990年。『浪漫飛行』と『おどるポンポコリン』が脳内に鳴り響きます。
 細かいことは言いません、小さく軽いボディをトルクフルでレスポンスに優れたエンジンを使って、ミッションをカキカキ操って走らせるこの肉体の悦びよ。
 BORN TO RUN、人は走るようにできている、と言いますが、クルマはもちろん走るようにできており、本来走るだけで楽しいものです。

 なんで、こんな、カンタンなことが、いまのクルマにはできとらんのだ。
 なぜこれが、
 ホンダ・シティターボ12ぐらい「ブルドッグ」ではないのか。
 トヨタ・「カッ飛び」スターレット・ターボではないのか。
 日産・マーチ「スーパーターボ」ではないのか。
 彼らは一体どこへ行ったんだ。ダンガンは、アバンツァートは。
 なんでこの浜松のちいさなメーカーのちいさなクルマだけが、けなげにたった1台でもう何世代にも渡って(これ4代目ですがスズキはなぜか3代目と言い張ります)
「ホットハッチ」
の看板を背負い続けているのか。
 それがわからない。

 関西人が豚まんといえば「551蓬莱」ですが、わずか170円のあれを食する度に
「えっ。なんで豚まん全部これじゃないの?」
と疑問を感じませんか。
 それ。
 ある程度のサイズから小さめ、そうね全長4m切る程度、重さで1t切る程度、排気量もセグメント分けも最近当てにならんから価格、車両で200万前後以下、で「スポーツ」にしようとするなら必然的にこうなるっしょ。世界中のメーカーからこんな感じの、テイストだけが各メーカーの味が思想が気持ちが色濃く出た、そういうモデルが百花繚乱、それが「ふつう」の状態、なんじゃないですかね。
 なんでこれしか無いんですかね。
 ぼくなんかおかしいこと言ってますか。

 新型ジムニーもそうですが、街のちいさな洋食屋が昔ながらのとんかつ定食を作り続けていたら、チェーン店の味のしないカツか高級店の2000円のカツかの二択に疲れ果てた者共がわんさかおしよせて「これですよこれ」とか泣きながら食べてるの。食べログの☆3.7とか付いちゃう。
 30年前ならどこのお店でも食べられたとんかつ定食を。
 なんだこりゃ。

 ということで、スイスポたいへんいいクルマです。
 この手のスピード自慢にしては脚がたいへん柔軟で(モンローのショックがいいんでしょうね)乗り心地もかなりいい。すくなくともウチの便三郎(メルセデス・ベンツA180 2013y)なんかより全然いい。助手席や後席からも文句出ないと思う。
 エンジン極めてトルキー&レスポンシブ、どのギアどの回転数からでも踏めば即加速、よってMTでも運転すごく楽です。もちろんブレーキサポートの類もある。泣かせるのは全車標準じゃなく「そういうのは俺様の華麗な運転を邪魔するから要らない」という誇り高き愚か者共のためにオプション設定ってところ。
 このへん最新鋭車。
 だからなつかしいけど現代なのです。

 ホットハッチ好きに限らず、コンパクトカー探してる方は一度試乗されるとよろしい。アクアの燃費もフィットの広さもデミオの内装&ディーゼルエンジンもいいけど、「運転の楽しさ」ならピカイチですぜ。
 おっさんおばはんは思い出せあの日々を。
 若者たちは識れこの悦びを。
 ああ日本にスイスポがあってよかった。

posted by ながたさん at 00:00| クルマ