2018年09月01日

本「人生は運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている」ふろむだ




 書名の「勘違いさせる力」を「錯覚資産」と名付け、これの影響が大きいよ、というところまではなるほどと頷けます。
 が、「それで決まる」と言われるとどうだろう?
 著者プロフィールを見るとIT系技術者&人気ブログ著者で、つまりお金渦巻く華々しい世界。そこではそれが「とても効く」のかもしれません。
 でも、自分の周り見回して、研究者、教師、銀行員、中小企業経営者、セールスマン、製造業エンジニア、デザイナー、音楽家、政治家……つまりちょっと古くからあるジョブだと、やっぱり普通にいわゆる「実力」が大きいです。それに比例してるとまでは言いませんが。
 もちろんまれに能力は凄いけど不遇をかこつ人、も居ますが、
 ・時間にルーズ(朝起きれない、締切を守れない)
 ・お金にルーズ(金に汚い、やりとりそのものを忘れる)
 ・幼少時から芸術家肌
 ・鬱など心身不調
 ・ただサボり
などの「現代社会で」「仕事という面で」言えば明らかにクリティカルな原因があることがほぼほぼで、納得できない不可思議ケースは、僕はちょっといま思いつかない。
 特に自分で「おれは不遇」と言い出す輩はまず普通に実力不足です。

 そういう反論を見越して
「それはハロー効果で記憶の捏造で……」
というのが中盤以降で、実は本書の汎用的な魅力はそちら、最近の認知心理学のコアなところを極めてシンプルにまとめてあって、そこはおいしいです。
 ハロー効果、少数の法則、後知恵バイアス、利用可能性ヒューリスティック、デフォルト値バイアス、認知的不協和、感情ヒューリスティック、など。文字面だけは目にしたこともあるかもしれません。
 このへんをきっちり知るなら、本書にも言及のある、ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』がよろしいかと思いますが(読んだのですがまだ感想文は書いてません)、ちょっと硬いので手短に「どんなものか」だけ知りたい、なら本書が役立ちます。図版も曖昧ですがわかりやすい。



 著者テンション高く(この本を読むことで)
「あなたは、ある種の力を手に入れたのだ」
とまで言い切りますが、いやわたしむしろ著者に転職をおすすめしたい。農業とか、大工さんとか、フィジカルなものがいいんではないですかね。できれば東京を離れ地方の。ここに書かれているような世界ではない世界がそこに根付いていると思います。

 ……いやこの本自体がそういう反論を「釣る」ためのもの、1年ぐらいしたら真逆のことが書かれた本が出る、というメタなネタなのかもしれませんが、とにかく僕生きてきて思いますけど、大きく見せるのも小さく見せるのも、もちろん違う風に見せるのも、しない方がいいと思います。といっても正しく見てもらうこともまず不可能なので、まあつまり、人の目はあんまり気にしないのがいいと思いますよ。

posted by 犀角 at 12:19|