2018年10月04日

本「大坂堂島米市場」高槻泰郎





 ジュンク堂大阪本店つまりまさにその「堂島」アバンザ店で猛プッシュされておりましたので思わず購入。

「世界初の商品先物市場」と讃えられることも多い大坂米市場について詳説。仕組み、取引の様子、コントロールしようとする江戸幕府&大坂奉行所と、それに対応する米商人たちが活写されており、たいへんおもしろいです。経済系のジョブや学生の人はマスト・リード。

 世は仮想通貨で沸き立ってますが、大坂商人たちも「立物米」という「指数」の売り買いを行ってました。これ現物との交換関係が無いんです(途中まで)。
 ここが非経済系の方には理解に苦しむところで、「現物」の市場はわかる、「現物の先物」もリスクヘッジなどと考えればまあ理解できる、けどもその「指数」をやりとりって一体何?
 合理的な説明はたぶんつかず、本音としては
「強い者が弱い者を市場に引き込んでさらにかっぱぐシステム」
なんですが、まあそれはそれとしてそこで起こる悲喜こもごもが、第三者としてはおもしろい。
 後半に米相場に取り組んだ地方の商家の話が出てくるのですが、そこは米価の低値安定によって「米だけ商っててももうムリだ」と思い立って米相場を始めるのです。
 低年収に追い詰められて仮想通貨に手を出す今の人とそっくり。ただし長い間取引の記録が残っているので、そこそこセンスがあって「勝ち続けた」のでしょうが、それもつまり長年米を扱ってきたおかげではないかと思ったり。

 江戸幕府も手をこまねいて見てたわけではなく、あの手この手で市場に介入しようとするのですが、彼らの視点は米価(をできれば高値)安定で、そうであるならば別に良い、と。
 僕らが日本史習った頃ですと、江戸幕府も諸大名も「市場経済」に対応できず四苦八苦する、というイメージでしたが、人間はそんな甘いものではなく、むしろ大名は支配下の農民に「土地と品種の相性などどうでもいいから、とにかく見栄えのいい米を出せ」と命ずるあたりは過剰適応とさえ言える。
 サンプル米出荷の時は180人からで一粒一粒選り分けたらしいですよ二俵分ほど。
 幕府もちゃんと学習回路が働いていて、前回の施策で上手く行かなかったり反発を受けたところは調整する。固陋な頭で「ならんものはならん」と言うだけではない。もっと現実的&合理的です。

 すごく江戸時代の商人たちや幕府のお役人たちが身近に感じられ、お米ってものは昔から複雑なシステムをくぐって届けられる、極めて大切な物品なんだなあ、と改めて思えます。
 よい本です。おすすめ。

posted by ながたさん at 15:29|