2019年02月25日

マンチェスター・シティ、カラバオ・カップを連覇して1冠目! めざせ4冠! その前にこれで予習! シティとは!? ペップとは!? そしてポジショナル・サッカーとは!?



●ドキュメンタリー番組『ALL or NOTHING』Amazonプライム・ビデオ



 超おもしろい。
 マンCのリーグ優勝、2018シーズン密着ドキュメント。
 必要以上に湿気を入れない、だからといって涙や情熱、浪花節が無いわけではないもちろん溢れ出す、多大な期待を背負いながらぶっ壊れまくるメンディ、未熟児の子が気になって仕方ないDシルヴァ、頼れる主将・コンパニも黙々とリハビリを続け、満身創痍のシティはしかし4冠めざして突き進む。率いるはもちろんペップ、ジョゼップ・グアルディオラ監督、スペイン人、カタルーニャ人、バルセロナのレジェンド。
 ペップの英語が汚いのなんの(笑)
 練習中や試合前後の気合い入れではFワード連発(もちろんハンドサイン付き)、常に冷静に敵の嫌がるところへズボズボパスを出してた現役時代ピッチ上の姿からはかけ離れ過ぎてて面食らいます。
 まあしかし忙しいですから、監督も選手も。
 ギュッと凝縮して短時間で、必要な戦術や方法論を飲み込んで咀嚼して栄養にせねばなりません。この「吸収力」言い直せば「学習力」こそが現シティの強さで、おそらくはシティ(の強化担当チキ・ベギリスタイン)の選手選択の第一優先順位にあるのはこの能力ではないか。
 まもちろん現在の1トップはアグエロかジェズス、つまりアルゼンチン代表のブラジル代表の9番を2枚揃えているわけですから、単純に能力値も最高級なわけですが。

 そのペップ、およびシティが是として取り組むのが「ポジショナル・プレー」という概念で、ぼくの理解では
「次のプレーをする時に、さらに有利になる位置へ位置へと全員が動き続ける」
ような感じ。変な日本語だな!
 A選手からB選手にパスが出たら、B選手が次のプレーの選択肢を持つわけですが、その選択肢がいい選択肢がたくさん並ぶように、A選手も含めた他の選手たちも動く。B選手がC選手にパスを出したら、次も同じように……で、こうしてパスを繋いでいくと、相手の陣形が崩れる。そこで主にウイングか攻撃的MFが、フリーに近い体勢十分でボールを持てる。こうなったらピンポイント・クロスを正確に入れて、優秀なFWが仕留める。
 概念はシンプルなのですが、実現はたいへん難しい。個々の選手が、相手にプレスを掛けられてもボールを簡単に失わない能力があり、正確に味方にパスを出せる能力があり、自分にボールがない状態でも(敵も含めた)周りの選手の動きを把握して味方の並びをよりよくする位置に走り……というのを90分繰り返す。身体もですが頭が死にそうです(笑)
 TV観戦してると斜め上から見れるので「あそこにスペースが」なんて誰にでもわかるわけですが、ピッチ上では平面で見てるわけですから、そう簡単に「優位な位置」なんて理解もできないし、見つけられない。これを攻撃時も守備時もずーっとやる。
 だからシステム、4-3-3だとか4-5-1だとかいうのは相手の並びに合わせてスタート位置を変えるだけの話で、いざボールが動き始めたらやってることは基本同じ。

 まあ、鍛えればどんな能力も上がりますし、ウイングやサイドバックならタッチラインを背負うので半分ぐらいの視野や感覚でもイケるのかもしれませんが、中央はたいへんです。特にど真ん中、守備的MFやアンカー。
 だからシティのいま一番の悩みがその中央、ヘソ、「フェルナンジーニョの換えが居ない」という点。
 もし今年、ケガその他の要因で「フェルナンジーニョ不在がキツくてタイトルが獲れなかった」ということになったら、また大枚叩いて大物買いそうです。実はラキティッチ(バルサ)に粉掛けてるんじゃないかなと睨んでるんですが……4歳若返るだけでも時間が稼げる。デ・ヨング(アヤックス、来年はバルサ)は個人的にはシティ行ってペップの下で勉強した方がよかったと思うんですが。まあ、バルサに誘われりゃ断れないのはよくわかりますけども。
 もちろんペップは現役時代そこの選手。「タクトを振る」という表現がピッタリの魔法のパスワークは以下の動画で↓
 冒頭2つめのプレー、「2列飛ばす」というのがヨダレが出ます。反応したクライファートも凄いですけど。
https://www.youtube.com/watch?v=ak7IGC1HFrI

 ここからまた繰り返しの妄言ですが、わたしサッカーのキモはあのポジション(セントラルMF、特に低め)だと思ってて、だから自分がサッカーコメディを描く時に10番をあのポジションに配置したりしているわけですが、ペップという世界最高の監督が、最先端の理論を振りかざしても、「フェルナンジーニョが居ないとしんどい」みたいな話になるのが、サッカーのおもしろさだなあ、と。
 結局やるのは人間です、それも記名性のある、属人的な、「この人じゃなきゃダメ」みたいな。
 システムだ、オートマティズムだ、鍛え上げろ身体を神経を認知を、とGPSブラつけて一挙手一投足を3Dで解析して機械学習だビッグデータだなんだかんだをビュンビュン計算して、行き着いた先が
「フェルナンジーニョ居ないとしんどい」
てのがおっかしいでしょう。
 そんなこと草サッカーを素人がひと目見てもわかるじゃないですか(笑)
 まあだから観てられるといいますか、スペックがいいのが活躍して、上からいいスペック並べたチームが勝つ、のではない、ところこそが、サッカーのおもしろさです。

 先日C大阪v神戸戦の感想を書きましたが、監督、ロティーナ、リージョ両者ともスペイン人でその「ポジショナルサッカーとは」をよく識るお二人。だからこそガップリ四つの見ごたえあるいい試合で、一枚上手だったC大阪が「VIP」をほぼ無効化できたわけです。

 というような付け焼き刃の理解は以下の本で得ました↓
 ペップの本というよりポジショナルプレーの本かも。
 でも上述の「マンCは学び続けるチーム」という認識も補強してくれます。なんせその監督、ペップ自身が学びマニア。勝ちたいというより学びたいからサッカーをやっている、とすら思うほどです。
 まあ最高峰の人というのはどんな分野でもそうなんでしょうけど。
 この本薄めて薄めて
「ペップに学ぶ学び方」
みたいな安い本つくったら売れるかも。

 ペップは現役後半、ビッグクラブ引く手あまたの中からイタリアのブレッシアという小チームを「Rバッジョと一緒にやれるから」と選んだり、当時はまだ珍しかったカタール行きを決めたり、リージョに誘われてメキシコでちょっとやったり、すでに指導者としての未来を見据え、見聞を広めていたような気もします。
 戦略家。

●本『グアルディオラ総論』マルティ・ベラルナウ


posted by 犀角 at 00:00| コンテンツ