2019年03月19日
「陽中の陰、陰中の陽」。そして「同級生」の穏やかさ。
●バラエティ『さまぁ〜ず×さまぁ〜ず』
昔、『パペポTV』にゲスト出演された香川登志緒先生(いうまでもありませんがレジェンド放送作家です。代表作は『てなもんや三度笠』)が、MCの笑福亭鶴瓶さんと上岡龍太郎さんを指して上記の言葉、「陽中の陰、陰中の陽」を教えてくれました。
それは太極図(勾玉が2つ噛み合ったような図、道教のシンボル)↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E6%A5%B5%E5%9B%B3
を解説する言葉のひとつ。陽は陰から出て陰を飲み込もうとし、陰も陽から出て陽を飲み込もうとする。この陰陽のダイナミズムとバランスこそが、創造の源だ、と。一見ほがらかな鶴瓶さんにも目が笑っていない冷たい瞬間があり、一見厳しい上岡さんが少年のようにキラキラしている瞬間がある。単に陰・陽の組み合わせではなく、陰の中に陽があり陽の中に陰があって、なおいい、と。
これ聞いて、香川先生の教養に「カッコイイなぁ」と唸りながら、そして鶴瓶&上岡のかみ合わせがどうしてこんなに「いいかんじ」なのか、すごくよく理解できたんです。
で、それ以降よく見てると、人気の出るお笑いコンビというのはどこも多かれ少なかれこうなってる。やすきよしかり、ダウンタウンしかり。
さまぁ〜ずもまさにそうで、陽に見える三村さんが実はマジメで読書家、子煩悩なマイホームパパであり、陰に見える大竹さんがボケ(天然ボケもある)でコントのネタ作りをする。
もちろんそういう二人が並んで立ってる、だけではダメで、「噛み合う」必要があります。
ここで二人が高校の同級生である、というのが効く。
つまり「噛み合わせる」必要はなくて、すでに多感な時期から親友として一緒に遊んでバイトして女の子を取り合って、噛み合ってる。でお笑いを始める、陰陽が回りだす、ウケる、ゴールデンにレギュラーがある。
そういえば最近、芸人さんに高校の同級生が多いなあ、と思い出すと、とんねるずを筆頭に、ナインティナイン(ただし岡村さんが1年先輩)、くりぃむしちゅー、おぎやはぎ、アンジャッシュ、U字工事、サンドイッチマン、NONSTYLE(同じ中学だけど仲良くなったのは高校)、ジャルジャル、千鳥、とろサーモン……と人気者だらけ。大ベテランではザ・ぼんち師匠も。(もっと前からの友達同士も多いです、チュートリアル、ダウンタウン、ANZEN漫才、オアシズ、ココリコ、オードリー……)
既に友人同士、それも「同じ仕事を一緒にしよう」と思うほどの親友同士であることから醸し出される「安心感」みたいなものが、息苦しい現代に合ってるのかもしれません。漫才ブーム以前はもっとボケ・ツッコミで「切り結ぶ」って感じでしたもんね。もちろんその緊張感がキレや爆発力を生むわけですが、社会は変わる。もちろんまた変わって、友人同士のゆるさでは満足されない時代が来るかもしれない。
「友人同士が何気ない日常を語り合うだけでおもしろい」というのは、大人になってその機会が減るにつれより強く感じることですが、そこには実はこういうメカニズムがある、かもしれない、そしてそういうことは大昔の人が既に知ってて概念化までしてて、ちょっと昔の人はそれを知識として知ってた、というおはなしでした。
posted by 犀角 at 09:54| 雑記