2019年04月22日
マンガ『キングダム』1-54(続刊中)
映画公開ということでおめでたい。
もちろん人気作、存在は知っていたのですがあっという間に50巻を超す大部になって、「うわぁ今から追うのは大変だなぁ」と思っていましたら、『内さま』で内村さん・さまぁ〜ず3人が3人ともハマってて「大自然クイズ」で楽しそうに「ファルファルファルファルファル!」と叫んでる様を観て重い腰を上げ、追いつく。
おもしろいッス。
どう例えようかと悩むのですが「現代版・横山三国志」でどうだ。
三国志ではなく秦の始皇帝、に使える大将軍「李信」が主人公のモデル。戦災孤児の身の上から王宮の陰謀に巻き込まれ、そののち血で血を洗う戦場で成長していくおはなしで、友情・努力・勝利、これぞ(ヤング)『ジャンプ』という一本です。
中国の古典で好き嫌いの分かれるところ、つまり、くっどいくどいキャラ付けがなされた英雄豪傑が、小物を文字通り薙ぎ払いながら(上述の『ファル──』は騰という将軍が進撃する際、得物を振り回す擬音です)1on1の死闘にもつれ込むところ、何万の軍勢同士が激しく激突して戦略と戦術が入り乱れその中でも豪傑が大暴れするところ、嫌らしすぎる宮中・敵国との政治的な駆け引きや陰謀……などなどがまさに満漢全席のようにてんこ盛りですので、あのノリがお好きな方には絶対のオススメ。逆にお嫌いな方にはまず無理(笑)
それでも少年〜青年向け漫画誌ですので美麗かつクッソ強い女性陣が適宜配されているとか、男性ライバルも年長・同年代問わずむくつけきおっさんのみならず美形連発であるとか、いちおうソフィスティケートというかエンタテイメントとして楽しめるように工夫はされてるので、
「三国志は曹操が恩人を間違えて殺しておきながら居直るところで脱落」
という方ももしかしたらイケるかもしれません。
なににつけ中国ってのはスケールのでかいところなので、日本に居て中国の方と触れると時に「大雑把だなぁ」と思うこともあるかもしれませんが、そのぐらいの解像度でないとやってられないのかも、なんてことも感じたりします。
むしろ日本の社会の異様な解像感の高さ、たかだか0.5%のTポイント、つまり一食分4円をこそげ取るためにガストのレジ前でスマホを取り出してモバイルTアプリを起動してる哀れな自分に気がついてゲンナリしたりしたら、こういうの読んで「……世界は広い」と思い出す。
この作品の楽しみ方もうひとつ、史実とのギャップを調べて楽しむ、というのもあります。
54巻現在、秦(と主人公・信)が激闘を繰り広げる趙の総大将は李牧というイケメンなのですが、これ史実では趙王が突然崩御して都に召喚され、あとを継いだ王が讒言を信じ殺してしまいます。
それだとここまでの「最大の敵」の死に方としてはあまりにあまりなので、やっぱり直接対決で信が倒すんではないですかね。で、王騎の矛、ヒョウ公の盾に次いで李牧から李の名を貰う、とか。
それはないか。
などと。
ごぞんじのようになんとか天下は統一されるわけですが、その過程で主人公・信(のモデルの李信)は数十万を喪う大敗を喫しますし、統一後十数年、始皇帝が亡くなってわずか数年で秦は崩壊してしまいます。
どのあたりまでどう描くのか。
まあ統一のところで止めちゃうのがキレイですわね。
しかしこのペースだとまた『グイン・サーガ』のように「敵は作者の健康」とか言い出さないといけないような、いやその前に自分がくたばるかもしれん(笑)
「大部すぎる」と腰が引ける方には、第一部というべき宮殿奪還のあたりまででも十二分に楽しめます(今度の映画もそこらしいです)。1巻〜5巻。むしろここが「冒険譚」としては一番おもしろいかもしれない。でもやっぱり、キョウカイや王騎将軍、ホウケン、李牧、王賁&蒙恬が出てきてからが本番かな。
posted by 犀角 at 10:12| 本