2019年05月24日

マツダ3(一見編)


「……ここだけの話、ながた様だけにお見せします!」


というハイブランドの内見会みたいなセールストークが全国津々浦々のマツダ・ディーラーで繰り広げられた模様で(twitterで検索)、今日発表ですがひと足お先に観てました。
 もちろん海外ではとうの昔に納車始まってますので、実走動画だってザクザクあるわけですが、そこはそれ現場現実現物には敵いません。
 モノはファストバック(5ドアハッチ)の1.8Dバーガンディセレクション。いま手に入る一番いいグレードですな。色もちろんソウル(赤)。

「……スペシャリティカーだこれ!」

 その昔一大潮流としてあったのが「スペシャリティカー」というジャンルで、まあこの手の「スペシャル」にカッチリした定義は無いんですけど(コーヒーのそれを想起されたし)おおよそ、

「なんとなく実用性が低くて(カッコのために実用性を犠牲にして)
 なんとなく最新のメカが載ってて(意味など要らぬ、それはドリーム)
 なんとなく普通じゃない(俺は違うぜ、そんじょそこいらのヤツとは)」

 遡ればおそらく初代フォード・マスタング(1964)がその始祖。あれあんなもんが月販3万台を超えるという意味わからん売れ方をしまして、ま、クルマも商品ですので社会の何かを色濃く反映するもんです。時もちろんバブル前後、ちょいと余裕持った日本人が、「カッコと夢と他者との差異」を追い求めた。実に可憐ではないですか。
 というより車名を挙げれば、
 プレリュード(ホンダ)、シルビア(日産)の両巨頭を筆頭に、トヨタにセリカ、レビン/トレノにサイノス、日産にシルビアの兄弟180SX、R32型以降のスカイライン・クーペもそうですし、いま話題のマツダにはユーノス・プレッソ/AZ-3やMX-6。質実剛健で売る三菱や富士重工にさえ、エクリプスやアルシオーネがあった。
 百花繚乱とはこのことです。

 もちろん以来30年、「使い勝手と現実と自己同化圧力」の社会に成り下がり果て尽くした日本で、そんなジャンルが成立しようもありません。国産メーカーのラインナップをシゲシゲ眺めて見ても、90年当時の人と会話できるとして「これはスペシャリティカー」と認めて貰えそうなクルマは……
 ありません。
 ゼロです。
 はっきり専業の「スポーツカー」か、SUVもしくは軽を多少お色直しして差別化したモデルか(たとえばハスラー(スズキ)やC-HR(トヨタ))、で、そういうのは4代目プレリュードに乗ってたスペリャリティカー・オーナーといたしましては甚だ生ぬるい。

 スペシャリティカーは意味のないところに意味があるんです。
 おしゃれは痩せ我慢でしょう?
 スーツの上からダウンジャケット着りゃあったかいですよでもそこでバーバリーのトレンチを着る。
 物いっぱい積める人いっぱい積める、それならハイエース買いなはれ。
 でっきるだけ使いにくければ使いにくいほど、いいんです。

 ……というようなことが、駐車場にデーンと鎮座ましましたこの真っ赤なマツダ3を見てワーッと思い出されました。
 これですよこれ。
 この斜め後ろ視界の悪そうな感じ。
 後席頭周りの狭そうな感じ。
 無駄に幅広くてぺちゃつい感じ。
 不必要にでかいホイール、必要以上にワルい目つき、ド派手な赤やポリバケツみたいなブルーグレー。
 そしてまだ見ぬ心臓、その名も「スカイアクティブ・X」エーックス・エーックス・エーックス・エーックス……

 隣に白いCX-3が置いてあったのですが、どう考えても商品成り立ち上CX-3の方がスペシャリティ感あるはずなんですが、そこはそれ重言ですが「SUVなんて便利なものスペシャリティカーになるわけねぇだろ」をまざまざと見せつけられました。
 CX-3もデビュー当時はカッコいいクルマだな、と思いましたが、わずか数年で鼓動デザイン進化しすぎて二歩も三歩も先行ってる。
 工業製品のよいデザインの一つの目安は、
「新しいのに触れた瞬間、古いのが古くなる」
で、まあAppleの特にMacBookなどご覧あれ。(iPhoneはおそらく意図的に毎回ガラッとテイスト変えているので、iPhone3Gも4系も5系もまだカッコいい)
 ついさっきまであんなに「これ以上やりようがない」と思っていたシンプレスト・デザインが、新型触れたあとだと実はモッサリモサモサのイモデザインであることが一瞬でしかも老若男女どなたにも理解され、「ああもう新型でなきゃイヤだ」と泣きながらクレジットカードを切る。
 というような感じで、現行型CX-5より前の鼓動デザインがもーうだいぶ古い。
 むしろこんなもん出してしまうと、その頃デビューのデミオとCX-3のセールスに影響ないか心配になるぐらい。

 特にわたしがグッと来たのがボンネットのパーティング・ラインをまるでスーパーカーかヴィンテージ・カーのようにきれーいにくるり切り抜いてあるところで、つまりフェンダーやヘッドライトなどに邪魔されずボンネットがボンネットとしてデザインされている。
「ミニマルも大概にしろよ!」
と心の中で怒鳴りました。
 口には出しませんよ、ぼくオタクじゃないし。
 内外装の良さは現物ご覧ください。一応「CarWatch」の記事貼っときますけど、現物の質感はぜひ現物で。
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/photo/1186139.html
 むしろここまで「引き算の美学」だと、エンジンもガソリン1500こそがベスト・チョイスではないかと思ったりもします。そのへんはまた乗ってから。
 あとセダンもはよ現物舐め回すように見たいなあ。
 セダンはね、こちらも当時の大潮流「4ドアハードトップ」の復活やと僕見てるんです。マーク2三兄弟を頭に、ローレルとかインスパイア/ビガー兄弟、さらにそれを推し進めもっとカッコに振った大ヒット作カリーナED/コロナExiv(トヨタ)。マツダにもペルソナやユーノス500がありました。
 4ドアだって、カッコよければそれでいい。
 セダンこのサイズにしては狭い?
 マーク2三兄弟全盛期に合計月3万とか平気で売れてたんですぜ。いいですかR32スカイラインはホイールベースがクーペより長いセダンですら、前席を一番うしろまでスライドさせると後席に当たったんですよ。
 それらに比べりゃアルハンブラ宮殿のように広い。

 現デザイン・トップの前田育男氏は(僕の乗ってる)先代DE型デミオのリードデザイナーですが、DW/DYと前2代で大成功したプチワゴン路線をキレイサッパリ放り投げ、パーソナル感マキシマムのデザインに仕立て直してしかもそれがある程度以上成功した経験があります。
「Cセグハッチ」
と聞いた瞬間我々クルマ・バカは
「すわゴルフ」
と超大名跡のライバルとしてどうなのか、とその視点ばかり持ちますが、それこそがその最大の敵の思う壺。VWという会社はゴルフたった1車種を1000万台売ってる会社と言っても過言ではなく、まさにゴルフばかりは命賭けで作っており、「ああいうの」を作ろうとすればするほど負ける。
 大河ドラマには、『ポツンと一軒家』をぶつけなければなりません。
 もちろん現実のその対決のように、それで大河(ゴルフ)に勝つってことはありえませんが、
「あーあれもいいな!」
という序列から外れた別の選択肢として存在感を見せることはおそらく可能。
「狭い」という客にはこれベースですぐ出てくるCX-30を案内するもよし、デザインの良さより広々感を取る顧客はそもそも相手にしなくてもよい。広いクルマはそこら中にありますが、カッコイイクルマはそうはない。

 元アクセラつまり元ファミリアの1500ハッチバックと聞くと、プライスリスト見て
「227」
なんて数字で「100高い!」と目を剥くかもしれませんが、くどいようですがこの30年日本「だけ」が順調に貧しくなってて、クルマが同じ内容でも円の価値低下とともに相対的に価格が上がっていってるだけで、諸外国での価格見ると特におかしくない。
 てかカローラ・スポーツ(トヨタ)だって1.2Tの中間、Gグレードで225よ。しかもこれナビ抜き。マツコネは5万でナビになるので(地図カードを買う)実は見た目よりお得、てか高ぇなカロスポ。
 トヨタのクルマ最近微妙に高くないです?
 シェア取ってるから高くても売れるんかな。

 それでもこんな狭そうなクルマ買うの怖い?
 生まれてこの方ミニバンで育ったから頭上天空まで抜けるほど広くないと不安?
 それに友達がRAV4を買った?

「そない高いところにお登りあそばして、見晴らしはようおます?」
「まぁまぁ、四駆が必要な田舎の獣道へよう行かはるんですか? 大変どすなぁ」
「人と荷物はおまかせします。うちは彼女と二人だけでゆるゆる行かさせてもらいます〜」

 そんな感じで切り返せ。
 ピンチはチャンス、不足は工夫の母。
 人と同じことしてるとAIに負けるぞ。

 なんだか懐かしくて涙出てきました。
 きっとそういう(オールド)ボーイ&ガーは、多いはず。

posted by 犀角 at 22:47| クルマ