2021年07月06日
ソデトーク #04 『プリキュアは嘘をつかない』
以下はFantiaに投稿したテキストです。
こちらにもコピーしておきます。
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今季の『プリキュア』すなわち『トロピカルージュ!プリキュア』、楽しんでますか?
ファイルーズあいさん演じる今年のセンター・サマーことまなっちゃんのノー天気な声がノー天から響くアバンから、Machicoさんの切迫感溢れる歌唱が叩きつけられる(しかも画面演出はヴェテラン・大地丙太郎)OPが始まると、日曜朝から「なんだか今週はいい一週間になりそうだぞ!?」感が噴き上がってきますね。きませんか?
個人的には、昨季の『ヒーリングっどプリキュア』から「プリキュアらしさが戻ってきた」と思っています。その「らしさ」とは何かというと、
「プリキュア以外の嘘はつかない」
という点です。
脚本のべからず集・鉄則集でよく言われるのが
『嘘は2つつくな』
です。簡単に言うと、ウルトラマンと仮面ライダーを一緒に出すな、と。
結局コンテンツなんて嘘なわけですが、もちろん楽しむ側もそれは百も承知、だから1つめの嘘は飲み込んでくれる。
ところが、2つめとなると、だいたい「ちょっと待って」てことになる。
1つめの嘘を前提として脳内・心内世界を構築中に、もう1つの嘘も考慮する負荷が掛かると、醒める(覚める、かな)んでしょうね。
プリキュアのいいところは、
「ごく普通の女の子が、大変な事態に巻き込まれて、なかばしょうがなく、しかしほおっておけなくて、プリキュアになる・プリキュアをやる」
っていうところです。
なぎさもほのかも、それを継いだ咲・舞ものぞみたちも、胸に7つの痣があるとか、百代前は伝説の戦士だったとか、特にそういった理由もないのに「行きがかり上」プリキュアに変身して、その後それを続ける。
だから、
プリキュアじゃない時にのほほんとごく普通の日常生活やっててもおかしくないし、最終決戦前後まで「敵の動向を探る」とかそうした攻勢に出ないのも納得が行く。望んでやってることじゃないので。
ところがマンネリ打破のためか、『魔法つかいプリキュア!』で大きく方針を転換して、も1こ嘘ついてきたんです。
「この世界には魔法つかい達の別世界がある」という。
もちろん「いままでの妖精ワールドをちょっと拡張しただけじゃないか」と強弁できなくもないですが、あの作品、たとえばプリキュア要素を無くして魔法学園メインの、
『魔法つかい みらリコ!』
なんて作品にしてもイケちゃうので、やっぱりそこには今までとは質的違いがある。
で、これがおそらく特にメインターゲット層の未就学女児にウケたんでしょうね。そりゃそうですよ、ぶっちゃけ『ハリー・ポッター』ですからウケんわけがない。そこから4シーズンほど、プリキュアの他に濃いめの嘘をつく。
『アラモード』ではパティシエになるし、
『HUGっと』ではタイムトラベルやるし、
『スタートゥインクル』では宇宙に飛び出す。
これをやるとですね、派手な世界観に負けないように、とキャラも濃くなりがちです。マジカルは名家の百年に一人級の天才ですし、パルフェは七色の光を身にまとう天才パティシエですし、大女優の娘にメダル級のスケーターに、アンドロイドに宇宙人に宇宙怪盗に……
上述の「普通の女の子が」に目をつぶってそれそのものは受け入れるとしても、その煽りを喰うのがセンター、ピンクで、みらい、いちか、はな、ひかる、みんなもちろんいい子なんですが他が濃すぎて目立たない。全員濃いめというと以前の『スイート』や『ドキドキ』もそうなんですが、その真ん中であるところの響もマナも負けてないぐらい濃くて負けてない。
やっぱりおはなしはセンターがMCとして回していくものなので、真ん中の軸がふわっとしてるとなかなか話が回らない。回りにくいからサブキャラやゲストにも濃いのが出てきてますます世界が極彩色になり、「これもうプリキュアでなくていいんじゃないかな……」
それをギャッと元へ戻したのが昨季で、その流れで今季はさらにセンター・まなつがシリーズ屈指の能天気で、人魚の国がたいへんだ、つーとんのにメロンパン食いながらいろんなイベントやってトロピカってるわけです。
これでこそプリキュアになってからが映える。
画面的にもサマーは久々の白キュアで(立ち位置から「ピンク」に分類されると思いますが物理的には白)原色(紫・黄・赤・青)の真ん中に白が居るとまさにジャッカー電撃隊後半のビッグワン
古いなあもう!!
どこからどう見ても主役、どこからどう見ても正義の見方です。
特に変身後は吊り目気味で、こういうキリッとした目は過去センターではブラック(『ふたりは』)とメロディ(『スイート』)しかおらず、こちらも久々の男前系です。
プリキュア好きすぎてちょっと脱線気味ですが、とどのつまり言い換えると、
「やらない」
っていうのも重要な「やらなきゃならないこと」で、嘘いっぱいついた方が面白さ上がりそうに思っちゃうんですが、そこガマンして1つの嘘を際立たせる、というのが骨格考えるときの基本的な方向性だと思います。
でも、ちゃぶ台返すようですが、おもしろけりゃなんでもアリで、そもそも上述のように『魔法つかい』は当たりシリーズに分類する人が多かろう作品ですし、いやそもそもプリキュアっていつもオールスターズやってんじゃん、という話になったり、かくいうエテクシもその昔『Routes』っていうもホンマにガチで「嘘2つ」の作品を担当させられた経験があれほんとシャッチョさんとまるいさんがどっちもゆずんなくて板挟まれたエテクシがホットサンドのように潰れて具をはみ出させながら……
「おもしろくないことはないんだけど、なんかちょっと胸焼けするな」
と思ったらだいたい嘘のつきすぎです。この視点でサラッと批評すると、
「おおっ」
と思われますよ(笑)
posted by 犀角 at 00:00| 雑記