2021年06月29日

ソデトーク #03 『こんまりの表と裏』


以下はFantiaに投稿したテキストです。
こちらにもコピーしておきます。
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ソデトーク #03
『こんまりの表と裏』


先日ヨダレ垂らしながらweb見てましたら、こんな記事↓
https://courrier.jp/news/archives/248811/
ドイツ人サステナブル政治経済学者さんが、いまワールドワイドで荒稼ぎしているこんまり=近藤麻理恵さんのメソッドについて

「……そもそもそんなに買わなきゃいいのでは?」

という身も蓋もないツッコミをしてて、ゲララッと笑ってから「ハッ」として飛び起きて書棚の『人生がときめく片づけの魔法』(近藤麻理恵)を出してパラパラめくる。

「書いてない!
『買うな』って書いてない!」

 これですわ。
 この本が超ベストセラーになり「こんまりメソッド」が世界でもてはやされる理由。2点あって、

1「捨てる」と「買わない」のいっぺんに2つやるのはしんどい
2(おそらく)経験上、溜める人に「買うな」は無力

 だってそうでしょう、そのへんの雑誌の片付け特集・収納特集・断捨離特集・ミニマリズム特集、まず「余計なもの買うな」って一生懸命諭してくれるでしょう? で、それは間違いなくそのとおりですよね。疑いなく。
「入」が多すぎるから「出」が追っつかないんであって、「出」の最適化も図りながら「入」の調整もせなあかん。家計をフィナンシャルプランナーに診てもらうのであれば「入」がほとんど動かせないから「出」だけ云々すればいいですけど、モノの所有は違う。入もコントロールできる……

 できないんですね、たぶんね(笑)
 こんまりさんはこの本手掛けるまですでに片付けコンサルタントとして多くの実績を持つ方なので、実践の中で
「ああ『入』のこと言っても無駄だな」
というコツを掴まれたんだと思います。
 で、そこがあの本の、こんまりメソッドのイノベーティブなところで、2つ言われたら「しんどい」と思うことでも、1つだけ、捨て方だけ言われたら「なんとかなるかな」と思ったりする。
 つまり表技が例の『ときめきで決めろ』で、裏技が明言されてませんが明言しないということはつまり『買う方は好きにしろ』なんです。

 表技・裏技が決まってると効果的で、野茂英雄は清原のバットを叩き折る剛球ストレートあったればこその、古田敦也を落ち玉中毒にさせたフォークボールが効くのであって、明示するしないは別にして表が用意できたら(まあそれがそもそも難しいんですけどね)、ぜひ裏も意識したい。

 もひとつ例をあげるならダイソンの掃除機。
 あれは表がサイクロンで、裏がクリアビンすなわち透明で取ったゴミが見えるデザイン。今でこそそれがスタンダードになってますが、当時はダイソンしかやってなかったはずです。(もちろん紙パックか布フィルター式がほとんどだったから、中見せてもしょうがないって意味もあった)
 これがね、使ってみればわかりますがすごいイイんですよ。
「いま掃除した結果が見える」
っていうのは紙パック式には無い超便利・超満足機能で、紙パックに戻れないのは、サイクロンの吸引力持続よりも僕個人的にはクリアデザインの方です。
 でもみんなサイクロンの話ばかりする。
 ダイソンも(おそらく)わかっててサイクロンの話ばかりする。
 してみると裏は気づいてても言わない方がいいかもしれませんね。
 Appleなんかも表の話しかしないんですけど、裏が強いんですよ。iPhoneみたいなモバイル機器なら手触りみたいな身体性とか、あるいはiOSなら4〜5年前の機種(今でいうと6sとか)でも全然イケるUIの演出とか。

 いや、『人生がときめく片づけの魔法』を読んだ時に、主題である「ときめきで斬る」という判断基準の簡単な一元化はとてもわかりやすいしキャッチーだし、たくさん書かれてる直感に反したTips、たとえば「書類は全捨て」とか「収納は買うな」みたいなのもいちいち合理的だし、とてもいい本だと思ったんですけど、だからってそんなバカ売れするような「違い」があるかなあ……と思ったんです。
 なるほど、「ない」「言わない」っていうのも違いになるんだなあ、と。

 ちなみに僕も何度か大片付けしたんですが、あんまり人生はときめきませんでした。2週間風呂に入ってなかった男が風呂入って体隅々洗っても、特にイケメンになるわけではないので特に何も起きません。お片付けはあくまでディフェンスで、だからこそめんどくさかったり苦手だったりする人が多いわけで。
 ……というような話を妻にしますと

「わたしの必勝法は
 『買わない』
 『管理しない』
 『躊躇なく捨てる』」

 まあこっちの方が最近風かなあ。アニメを配信で一気観して終わり、みたいな。昔は本編をリアルタイムTV前正座して待って観て、気に入ったらLD/DVDを揃えて、シュリンクにカッター入れてそーっと取り出して……
 してみるとこんまり先生のメソッドもゆくゆくは若い人に「は?」と言われちゃうんだろうか、いや「世にコレクターの種は尽きまじ」と言いますから、ある一定割合で物に情報に溺れる人は居るのか。

 そんな話です。
 甘い話にはだいじなことがボゴッと落ちてたりする、という言い方もできる。
posted by 犀角 at 00:00| 雑記