2013年04月26日

本「日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体」 深尾葉子




 人は真実であればあるほど目を背けたいものです。
 以下ネタバレもあります。


「タガメ女とカエル男」というキーワードを聞いた瞬間に「ああ!」と膝を打ちました。
 アインシュタインの相対性理論が、原理は難しくてわからなくても
「質量はエネルギーなんですよ」
と言われると「ああ!」と「ものの見方」が突如広がるように、「タガメ女」というこのたった四文字が、多くの人がモヤモヤ・うすうす感じていた現象をクッキリと実体化します。
 いまここをお読みの皆さんも、そうではないですか?
「タガメ女」と聞いた瞬間に、この本を読んでもいないのに、3つ4つ、具体的な顔が浮かびませんでしたか。僕は浮かびましたよ……そして「タガメ女」とは、その、ご想像の通りです。その対になる「カエル男」も。

 本質を突いたこの刺激的な言葉は人々の心を掻き毟り、その奥底に沈殿していた澱を巻き上げたらしく、「タガメ女」との文字を見た瞬間、twitter上ではまさに劇症反応が起きてます。
 安冨先生のまとめ↓
http://togetter.com/li/491036

「読んでもいないのにくさす」
それは現代日本に生きるまともな大人ならば中学二年生ぐらいで

「『○○』なんてものはさぁ」
「ながっちゃんそれ読んだの?」
「……いや」
「読んでから言いなよ」
「……はいすいません以後気をつけます」

と友人に叱られて学ぶ「基本マナー」だと思うのですが、そういう外付け・後付けの「エエカッコ」を突き崩してしまうほど、なりふり構わずこの言葉とこの言葉を吐く主を我が心の視界から排除してしまいたい、それほどの破壊力があります。

 本作はそのタガメ・カエルの現在の生態と、生まれい出た背景を簡潔にしかし鋭く描写、それらが巻き起こす社会への「害」についても言及します。その生態・害こそ、世間を騒然とさせたいくつかの事件について、ぐうの音も出ないほど鮮やかすぎる解。最初苦笑してた読者も読み進めるほどに心を締め付けられます。
 タガメ女が「嵌めている」と思っていたその「タガ」そのものに自分が嵌められて、堕ちていくその様子。
 そうタガメ女は加害者であると同時に被害者なのです。必然的に、その毒牙にかかるカエル男は被害者と言うよりも共犯者。

 かかる壮絶な現状を目の当たりにして何をどうするか。それは個々人が文字通り胸に手を当てて考えることなのでしょうが、しかし僕はタガメ・カエル関係でない夫婦(カップル)を身の回りにたくさん知っており、まだまだ捨てたものではありません。いい例たくさん見て
「あ、夫婦(結婚・カップル)てのはあのぐらいゆるい結びつきでいいんじゃなかろうか」
と知ることが大切ですかね。
 独身の僕が言ってもなんの説得力も無いですが(笑)

 実はこれ読みながら思いましたのは、
「タガメ男」
も居ます。対になった女性(の家)のリソースを吸い尽くす男。わたし具体的に4件ぐらい知ってる。だからこの関係はひょっとすると男女がある限り、油断すると堕ちてしまう人類普遍のものかもしれません。
 その行き着くところまで行った極端な例が例の「北九州監禁殺人事件」と先の「尼崎事件」ではないでしょうか。主犯がそれぞれ男・女なのも興味深い。
(ご存じない方はWikipediaなど引かれると良いと思いますが、あまりに強烈な事件ですので心の調子がいい時にリーチしてください)
 それら変種亜種についてもフィールド・ワークが進んでいる模様で、続編に期待です。

 それらまとめて最後に描かれる絵は、「魂の脱植民地化」に通ずるもので、
http://rakken.sblo.jp/article/59045502.html
つまり「箍女(タガメ)」の「箍」は、実は、多くの人の心にガッシリと掛かっている。これを、意識し、外す・外れなければ、社会の生きづらさ・息苦しさは解消されない……この本を読んで感じるところがありましたら、ぜひ上記の傑作・『魂の脱植民地化とは何か』を。
 きっと見える世界が、変わると思います。

「女の悪口は女に売れる」
とよく言います。しかしこれはそういう生易しい「女disり本」ではない。人によってはアイデンティティ・クライシスに陥りかねない(カエル・タガメ夫妻に育てられた純朴な小カエル・小タガメが突然これを読んで目が覚めたら……)激しい書物ですので、すこしお覚悟の上。だいじょうぶ、この本に興味を持った時点で、まだ間に合う(笑)

 参加ライター・窪田順生氏の記事もさすがにわかりやすいです↓
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1304/23/news019.html
 出版後のtweetまとめ(安冨先生による)
http://togetter.com/li/492269
 
posted by 犀角 at 22:15|