2013年06月24日

クルマ「ホンダ・アコードハイブリッド」試乗




 半電気自動車。

 軽く技術お話しますと、エンジンは基本的に発電モーターを回してまして、できた電気をバッテリに貯めて、その電気で駆動モーターを回して、タイヤを回す。
 つまり基本モーター走行。
 ただ時折、そうやって迂回させるよりもエンジン直結でタイヤを回した方が効率のいい走行状況があるので、その時は直結で回す。
 そんな感じ。
 僕は勝手に「パワー・バイ・ワイヤ」と呼んでるのですが、速度・アクセル開度(要求加速度)・エンジン回転数・モーター回転数・バッテリ残量などを瞬時に計算、その時その時に最適な「パワー」をクルマが勝手に発電したり放電したり機械力を直接使ったりして、用意してくれる。

 だもので、ドライブフィールはほとんどEV(電気自動車)です。
 モーターのリニアでスムーズな加速がかなり長い時間・シチュエーションで続いて、
「ああ未来きましたわこれ」
という感じ。
 プリウス・シリーズも出足はEVモードでスルスル走り出しますでしょう、あれが街中だとずっと続いてる感じ。
 ただ、想像してたよりは頻繁にエンジンは動いてて、(おそらくこれ)直結モードじゃないかな、という場面にもすぐ入りますし(モード移行はインフォメーション見てないとわからないぐらいスムーズ)、発電も、バッテリ・メーターがあるのですがわずか10数分の試乗中に2/10メモリが5/10メモリまでチャージされてました。
 とどのつまりは
「エンジンはずっと動いてるのに
 走りはEV」
という、今までにない新しい感じ。
 特にプリウスなどTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)車にお乗りの方こそ「おっ」と思うのではないでしょうか。

 日産リーフ(純EV)のオーナーさん達って、あの運用のめんどくさいクルマをしかし随分愛しておられる方が多いんですが、理由わかりました。
 EVは一回乗ると、もうガソリンとかには戻れませんわ。

 試乗は当然我が愛するデミ男くんでえっちらおっちら行ったのですが、試乗して帰りに乗ると
「なんだこの野蛮な荷馬車は!!」
さっき行きはなんの不満もなかったのに、この「エンジン」の喧しさと気忙しさと排ガスをぼーぼー出してる非エコな感じと(いやアコードも出てるて)、「トランスミッション」(あ、上記のような方式なのでアコードにはいわゆる「トランスミッション」がありません)の輪ゴム伸ばすような力がちゃんと伝わってない感、いやもう、電気機関車を前にした蒸気機関車です、ってほとんどそのままですけど。
 あるいはメッサーシュミットMe262に立ち向かうマスタングやサンダーボルト。
「これでいいんだ!これで!」
と口では叫びつつジェットエンジン観てるとヨダレがツーッと……

 まあ近々の例で言うとスマホとガラケーですかね。いろいろ失ったものもあったけど、もう戻れんでしょ。
 あれ。

 なんか帰りちょっとため息出ちゃいました。

 僕が「ハイブリッド」車に初めて乗ったのは2代目プリウスの出始めぐらい、だから2003年とかそのへんなのですが、その時の衝撃以来です。またひとつステージが上がった感じ。
 プリウスが「モーター・エンジン半々」ならこれはついに「モーターが主、エンジンが従」。

 とにもかくにも、このクルマは正直、いまの日本の環境では、このオンリーワンの
「モータードライブ・フィール」
に価値を見出すかどうか、ただ一点でその人にとっての魅力が決定づけられるクルマです。
 気に入ればこれ買うしかない。
 気に入らなければやたら高価でうすらデカい割に特徴のない変なクルマ。
 です。

 まあでもせっかくなのでその他の要素もダラダラ書いときますか。

 気になる実用燃費ですが、まだ情報が錯綜してて、「どうやっても22km/Lを切らない」というものから「メーターには14km/Lが残ってた」というものまで。
 それでも1680kgもあるあのバカデカいボディが15km/Lも走れば今までの2倍からヘタすれば3倍走るわけで、このクラスに乗ってた人にはたいへん恩恵あるでしょう。

(いまの)「アコード」というクルマはわかりやすく言うと「北米カローラ」で、「アメリカの普通の人が普通に買うクルマ」だと思いねえ。
 つまり「ザ・ファミリー・カー」で、高級感とかスポーティさとは本来無縁です。日本では歴史的経緯などからスポーツイメージも無くはないし、そもそも価格も高いのでちょっとおめかししてますが、乗るとそんな感じ。
 いい意味で「超フツー」。

 市街地まっすぐ走っただけなのでサスの感触とか語れるほどではないですが、特に問題なく。柔らかくて軽いです。

 ボディはでっかいんですが(4.915/1.850/1.465)、ホイールベースがそう長くないからか(2.775)、走りだせばそんなには気にならないです。ま駐車場ではちょっと苦労するかもしれませんが。

 室内は見晴らしいいですね。ホンダは伝統的にスカットルやベルトラインが低くて見晴らしはいいんですが、後席に座っても着座位置が真ん中よりで、わりと前が見える感じ、閉塞感少ないです。

 あそうそう、実車はですね、フロントドアあたりが幅の膨らみの頂点で、あと上屋をグーッと絞っていくデザインなので、斜め後ろ上から見ると超カッコイイです。
 写真で観てると顔エグいですけど、実車はボディのボリュームが凄いので相対的に顔の存在感はそれほどでもなくて、むしろこんくらいやらんといかんのかな、と思い直すぐらい。ただやっぱりブルー加飾はちょっと多すぎかな……

 本国では2400ccの4気筒にCVTを組み合わせるのが(日本ではオデッセイとかがそうですな)標準仕様で、これが$23,000から売られてます。
 北米はちょっと異様に価格安いのでそれを差し引きして日本円で265万スタートとか、そんな感じですかね。
 で、それにハイブリッド代として100万載せてる感じなので、正直その「乗り出し400万」という質感はありゃしません。
 ダッシュとかカッチカチの樹脂ですし、木目調パネルもシルバー加飾樹脂もシート表皮も「オデッセイと言われれば許せる」というカジュアルレベル。
 だから「高級セダンが欲しい」という方ははいここで解散。

 しかし!
「あんま高級じゃなくていいんだけど、いいセダンが欲しい」
と思われる方はそこそこおられるとおもいます。もう子ども達も中学生高校生になってミニバンまでは要らん。SUVはキャラに合わない。しかしだからってフィットにしちゃうほどはまだ枯れてなくて、プリウスか……いやみんな乗ってるしなあ!というような方。
 ドイツ御三家のA4、3シリーズ、Cクラス、+VWパサート、国産ならもちろんアテンザ・ディーゼルにレガシィB4あたりも入ってきますかね。(もちろんアコード乗ってたような生粋のホンダ党は言うにおよばず)
 このへんお考えの方は、一度冷やかしでも乗ってみられると、ガラガラと予定が狂うと思います。

 メーカーは技術ですよ!!

 繰り返しになりますが、これ乗った後だと「V6は4気筒よりスムーズ」とか「DSGだいや8ATだ」など文字通りの「目クソ鼻クソ」で、「寝言言ってんのか」とか冷めた目で観てしまう始末。
 自分の中で価値観の変化というか、「物差しの交換」が起きてしまうんですね。

「365万は高い」
というのはよく聞かれるところですが、前述どおりこのドライブフィールはオンリーワンですし、押しの効くでかいボディ、ナビからETCからアルミからなんでも付いててもう付けるものなし。まああと50は安くして欲しい気もしますが、ホンダ的にはいまレジェンドもインスパイアもディスコンでそのお客これに乗ってもらう必要もあって(レジェンドはたぶんまた出てきますけどね)、なかなか安くしてバンバン売る、ってわけにもいかんのでしょうなあ。
 また、ボディサイズ的にも安くすりゃバンバン売れるってジャンルでもないし。

 この1年急激に変わってきた価値観として、以前は、プリウスへの攻撃トークとして
「ハイブリッドのコスト上昇分>そのクルマのライフサイクルで支払うガソリン代の削減分」
つまり総支払い額では(ほとんどのユーザーで)損をする、というものがあったのですが、最近、BMWの3シリーズ・ディーゼル、アテンザのディーゼル、そしてクラウンのハイブリッドと、
「たいへん高価な高効率システム」
が積極的に選ばれています。つまり人々が金で効率を買い始めた。
 こうなってくると選択そのものが価値観を強化する方向にフィードバック掛かるので、以前なら「モア・パワー」とか「モア・高級感」にエキストラコストを出していたものが、「モア・効率」に出すようになるんです。
 だからこれも、2400のCVT車を265ぐらいで出して燃費トータルで10km/Lぐらい、だとほぼ全ての人がそっちのグレードの方が「お金がかからない」わけですが、まず売れない。

 変と言えば変なんですが、しかし振り返れば我々は、使いもしないターボパワー280PSとか四輪駆動とか後席マッサージシートに何十万もポンポン使ってきたわけで、それに比べりゃ「ガソリン使わない」という圧倒的で確実でオーナー全員に恩恵あるメリットにお金使わずになにに使うんだ、という気もする。

 まあそういう時代です。

 そうだ、唯一の弱点はトランクの狭さ。このクラスの大型セダンといえばトランクは死体がいくつも入りそうなサイズと相場決まってますが、バッテリの関係で奥行きは65cmほどしかなく(不躾メジャーを持ってって測りました。正確にはその上にちょっと空間はあるのですが)、さらにトランクスルーも無し。ゴルフバッグだと2個じゃないですか、レジャーでトランクよく使う方はご注意を。
 ただこれも惚れてしまえば屋根にキャリア載せて箱載せればいいんで、なんとでもなるんですけどね。
 愛さえあればロードスターでサーフィンにもスキーにも行けるんですよ。

 おかげさまで車椅子はたぶん無理、個人的に買えない理由が見つかってほっと一息、です。

 ──とはいうものの、多くの人にとって「高い」「デカい」「4ドアセダンなぁ…」というのも事実。
 しかし!
 この子はまさに「ホンダ逆襲の狼煙」。秋には大名跡フィットのフルモデルチェンジがあります。
 用意されるハイブリッド・システムはまたこれとは違い、1モーターながらDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)と組み合わせ、EV走行もできて高効率が狙えるとか。これは楽しみです。
(もちろんフィットなので、通常のガソリン車も用意される予定)
 後発でアクア(トヨタ)に負けるわけにはいきませんからな。
 噂ではこのフィットベースのセダンもあるとかないとか。
 名前が「シビック」だといいなあ。
 またどう考えてもこのシステムを載せたミニバン(オデッセイ?)が出るのは既定路線。北京モーターショーの背の高いショーカーがそれかも。まだまだミニバン天国の日本の環境では、こちらの方が注目浴びそうです。

 とにかくあの、電車のようなモーターフィールは一度味わってみてくださいな。
 プリウスでもたいがい未来感ありますけど、もう一歩先、行ってます。
 それを所有するかどうかは別にして、
「ああクルマってこうなっていくんだなぁ……」
と感慨に耽れますよ。

 カタログは無くなってました。
 ので、冒頭掲げました「すべて本」で吉田由美先生の22年変わらぬ美脚に酔いしれろ。
 
posted by 犀角 at 19:20| 雑記